全国の小売店で導入拡大! 大西衣料が手掛ける「ラックジョバー事業」とは

北野 裕子 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

小売店の売場において、専門業者が小売店にかわって特定の商品カテゴリーの品揃えや陳列、補充まで行うラックジョバービジネス。同ビジネスの衣料品分野で存在感を増しているのが衣料品や雑貨の総合卸・大西衣料(大阪府/大西寛社長)だ。取引先の店舗は、衣料品チェーンをはじめ、ドラッグストアやホームセンター、食品スーパーなど全国で約1000店舗にのぼる。小売店の要望に応じ、用意している約350台の売台メニューから最適な売場をつくるという同社。どのようなビジネスモデルを展開しているのか、事業担当者に話を聞いた。

”少ない負担”で衣料品の売場を展開できる仕組み

大西衣料が提供している売台メニューの一例。紳士用の靴下やインナー、アウターなどを取り扱う(同社提供)

 大西衣料が手掛けるラックジョバー事業の特徴は、売場面積に応じて展開する豊富な売台のメニューだ。10坪から150坪、大きい売場であればワンフロアまで対応できる約350種類の売台メニューを揃える。都市部や地方、商圏内の年齢層など店舗の商圏ごとに分析を行い、取引先の店舗の要望に応じて売台構成を組み、最適な売場をつくるという。

 小売店側は、売場のスペースと什器さえ確保すれば、手軽に衣料品の売場を持てる。大きな初期投資は必要なく、支払うのは商品代金のみだ。金額は売場や設置する売台数に応じて変動し、たとえば売台10台分の契約であればその分の商品代金を大西衣料に支払う。

 商品の発注から補充、商品政策(MD)や品揃えの策定まで大西衣料が請け負い、季節ごとの商品入れ替えや返品、値下げなども担う。在庫管理は自動補充システムが行うため、店側の業務は品出しのみだ。1000店を超える導入店舗の日々の販売POSデータをもとに、大西衣料の本部で販売・在庫情報を分析。週単位で在庫量をコントロールし、補充していく。

大西衣料が提供している売台の一例。写真は婦人インナー(同社衣料提供)

 シーズン商品が売れ残っても新たな商品と交換するので、小売店が在庫を抱えたり、ロスに関連した費用を負担したりすることはない。大西衣料ラックジョバー事業部第2営業チームマネージャー部の俵屋充博氏は「売場構成については、われわれ本部の方で、適時・適品・適量・適価・適所のいわゆる五適をすべてコントロールする。そのため、お客さまは決められた売場に商品を陳列していただき、店頭での売上を上げることだけに集中していただける」と力を込める。

 売れ残った商品、いわゆるロスについても小売店側にデメリットがないように対応したモデルであることも同社のポイントだ。俵屋氏は「衣料品は売れ残り、いわゆるロスが多いのが課題とされ、その影響で衣料品から撤退したという企業さまの声もよく耳にした。大西衣料のモデルであれば、小売店側にロスによって生じる影響はない」と話す。具体的には、売れ残った商品があっても新しい商品と入れ替えるので在庫リスクもなく、値下げをして費用が生じたとしても、その費用を小売店側が負担することはなく、さらに28%の粗利率が保証されるという。

 また、同社が扱うのは実用衣料が中心だ。そのため、改廃が激しくロスになりやすい、トレンドを取り入れた商品はほとんど扱っていない。「われわれが扱う衣料品のメーンのターゲット層は、トレンドに敏感な若年層ではなく、実用性を求める傾向が強い高齢の方になる。衣料量販店で販売しているような商品が欲しい人はその店に行くと割り切っている」(俵屋氏)。1年ごとに商品が大きく改廃することはなく、ロスも出にくいので販売動向も掴みやすいという。

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記事執筆者

北野 裕子 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

兵庫県出身。新聞社を経てダイヤモンド・リテイルメディアに入社し、ダイヤモンド・チェーンストア編集部に所属。

趣味は国内の海や湖を巡り、風光明媚な場所を探すこと。おすすめのスポットは滋賀県の余呉湖、山口県の角島大橋。

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