《勘》や《経験》をマニュアル化
富士通(東京都/山本正巳社長)の豊木則行執行役員常務から夢のような話を聞いた。
(その1)アグリカルチャルクラウドサービス
種まき→作業→収穫→出荷までの農作業のベストプラクティス化を図り、コストを削減し、利益を最大化するために始めたサービスだ。
たとえば、和歌山県有田市のみかん畑では、樹木1本1本からデータを収集、土の性質、日当たり、水やり、花摘み、肥料などの最適化を図っている。
そういえば、以前、イオンアグリ創造(千葉県)の福永庸明社長を取材した際に、このクラウドサービスを活用していると聞いた。
同社の牛久農場(茨城県牛久市)では、フィールドサーバーと呼ばれる機器を導入して、土中の成分データ、温度や湿度に関するデータを収集し、蓄積することで、土壌管理などが行われている。
また、収穫物の「おいしさ」についても、その生産プロセスや成分のバランスを調べることによって数値化しているのだという。
これまで、農業従事者の《勘》や《経験》に頼り切っていたものをデータ化して、誰でも同じような形でできるようにしているのである。
(その2)ヘルスケアクラウドサービス
これは罹病予測をするというものだ。
被検査者の①日々の行動、②毎年の検査数値の変化、③過去の病人のデータを掛け合わせ、クラウドベースに放り込んでしまう。
すると、「来年、あなたが糖尿病に罹患する確率は50%」といったように予想ができるのだという。
罹病予測が数年前からできるのであれば、未然に防ぐために、さまざまな手の打ちようがある。最終的には本人次第だが、これだけで寿命は2~3年は延びそうだ。
こうした夢のような話を可能にしているのは技術革新だ。いまや富士通が共同開発したスーパーコンピューター「京」を挙げるまでもなく、ビッグデータ解析が相当のスピードでできるようになっている。
そして、小売業的に見れば、この延長線上には「売れる店長 売れない店長」の行動分析、「バイヤーの目利きの技術」など、従来、《勘》や《経験》頼みにしてきた、ある部分をマニュアル化させてしまう可能性がある。