約3000万人のJALマイル経済圏を活性化!「JAL Mall」の戦略とは
コロナ禍により航空事業が打撃を受けたことをきっかけに、非航空事業領域のECサイトに力を入れ始めた日本航空(JAL)グループが、2023年5月に総合オンラインショッピングモール「JAL Mall」をオープンさせた。それまでも人気だったオリジナル商品はもちろんのこと、厳選した国内有数のショップと提携し、商品の取り扱い幅を拡充。マイルが日常的に使いやすくたまりやすい環境を整えることで、JALマイル経済圏の活性化をめざすという。JALのEC事業を展開するJALUX(東京都/髙濱悟社長)の事業担当者に、ユニークな会員を抱えるJAL Mall事業の特徴や今後の事業展開について聞いた。
約3000万人の顧客基盤をフル活用
2023年5月、日本航空(JAL)とグループ企業のJALUXがECモール「JAL Mall」を開設した。同モールの核となるのは、これまでJALUXが個別展開していた、JALオリジナル商品を中心にさまざまな商品を取り扱うオンラインショップ「JALショッピング」だ。このほか、機内で販売している商品を扱う「JAL SHOP機内販売オンラインストア」、グループの産地直送オンラインショップ「SORAKARA OTODOKE」もモール内に新規出店した。
さらにJAL Mallには「成城石井」「日本ハム」「PHILIPS」「De’Longhi」「ティファール」「西川」「BANG & OLUFUSEN」など、国内有数の有名ショップが出店。2024年1月22日現在、61店舗が集まっており、2〜3年内に200店舗まで拡充をめざす。
JALが非航空事業領域でEC事業拡大に舵を切ったのは、コロナ禍が航空事業領域に大きな影響を及ぼしたことが大きなきっかけ。JALグループ運営のEC事業が抱える3つの課題を解決する目的もあった、と松田真紀氏(JALUX ダイレクトマーケティング部 ECマーケティング課長)は説明する。
「1つ目の課題はグループ内で連立していたECサイトの統合。お客さまにわかりやすく、利用しやすいかたちに統合する目的があった。2つ目がJMB(JALマイレージバンク)会員との連携強化。3つ目が、ジャンルや価格帯で幅広い商品の取り扱いを希望されるお客さまの声にお応えするための、取り扱い商品の拡充だ」(松田氏)
JALが公式オンラインショップとして「JALショッピング」を開設したのは2003年のこと。そのほかに、出版事業を展開していたJALブランドコミュニケーションが版権などを利用したオリジナル商品を販売していた。さらに、古民家風レストラン「DINING PORT 御料鶴」を運営するJAL Agriportが、自社農園で栽培した農産物などを販売するサイトも連立。この事業内容を整理し、「JALショッピング」に統合した。
また以前からお客の声にあった取り扱い商品の拡充も、食品やトラベル関連の雑貨や電化製品、ファッションからコスメまで全方位的に行っている。そこで鍵となるのが、会員数約3000万人を誇るJMB会員だ。JAL MallのログインもJMB会員のIDで可能になった。
「2022年3月にJALUXがJALの連結子会社になったことで、JMB会員の顧客データを深く知ることができるようになったのが大きな転機。お客さまの属性や行動履歴などを分析し、購買に結びつけるデータマーケティングを今まさにやっている最中だ」(同ダイレクトマーケティング部長 福田晋也氏)
「JALショッピング」の売れ筋となるのがオリジナル商品だ。有名ブランドとコラボしたトラベル関連の商品や、JALの空港ラウンジで提供しているカレー、ラウンジで使われているアロマオイルや、JAL機内のファーストクラスで提供されるルームウェアなどを筆頭に好調な売れ行きだと松丸晶子氏(同ダイレクトマーケティング部 ファッションMD課長)は話す。また、ワインの需要も高く、1セット100万円を超える商品も30〜40セット売れた実績があるという。
「現在、好調なのはアウトドアブランド『モンベル』とコラボした冬用アウター。整備士が着ているものと同じ機能を付けて、タウンユースにリデザインした。今年は暖冬だが、好調に推移している。JMB会員の特徴は信頼のあるブランドを好む傾向にある。今後JALショッピングは、機能面や仕様を追求し、JALショッピングならではのこだわり商品の開発に注力していく」(松丸氏)