“ヒートテック戦争”の行き着くところ

2009/11/03 00:00
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 ユニクロは、2009年秋冬物でも、吸湿発熱素材の「ヒートテック」を全面に押し出し強化している。売場では、「ヒートテック」の新商品がきらきらと輝いている。

 

 発熱性、保温性、抗菌性、ストレッチ性、吸汗速乾性、静電気防止、形状保持といった特徴は、確かに納得のいくもの。またクールネックT(半袖)の1000円は実にリーズナブル。2008年には2800万枚を売り切った。

 

 ユニクロの動きに呼応するように、イオンでは機能性インナーの「ヒートファクト」で対抗。1000店舗で展開するとともに、対2008年比の約4倍となる1000万枚の売上目標を打ち出した。

 

 イトーヨーカ堂も負けてはいない。機能性肌着の「パワー ウォーム」をイトーヨーカドー165店舗で発売し、2008年比2.5倍の250万枚の販売を計画する。

 

 対抗する2社は、ユニクロより低価格。テレビやラジオのコマーシャルなどにも力を入れ、徹底訴求している。

 

 そして、こんな様子を見ていると1980年代後半に起こったビールの“ドライ戦争”を思い出してしまう。アサヒビールが「スーパードライ」を発売して、ビール業界のシェアが大きく変わるほどの大ヒットになるにしたがい、同業他社が一斉にドライビールを発売し、後を追いかけた。 

 

 同業他社には、(1)ドライビールマーケットにまだ参入する余地が残っていると判断したこと、(2)消費者の選択肢を増やすことで「スーパードライ」への一極集中にストップをかけること、という2つの思惑があったのではないかと考えられる。

 

 しかしながら、同業他社は揃って、大惨敗。自社の「ドライビール」の宣伝をすると「スーパードライ」の売上が上がってしまうという泣くに泣けない、笑うに笑えないような現象まで起こった。

 

 はたして、“ドライ戦争”とは異なり、2社の巻き返しは成功するのか?

 

「新たな潜在需要を見つけ顕在化することがわれわれの仕事だ」と柳井正ユニクロ社長はことあるごとに話しているが、成功者の後追いは、この考え方とは真逆であることだけは間違いない。

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