コロナ禍で家庭用向け事業が急伸のカクヤスグループ、黒字転換に向けた今期の戦略は?

崔 順踊(リテールライター)
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首都圏を中心に「なんでも酒やカクヤス」を展開し、酒類・食料品の販売および卸売事業を行っているカクヤスグループ(東京都)の2022年3月期の連結決算は増収ながら減益(赤字拡大)となった。アスクル(東京都)や出前館(東京都)と協業し、クイックコマースを展開するなどコロナ禍において酒類販売が困難な中でも積極的なサービス展開を行っている同社の決算概要と今後の成長計画についてレポートする。

カクヤス外観

「家庭用」の売上高構成比が大幅増加

 2022年3月期の連結業績は、売上高が対前期比6.6%増の855億円だった。構成を見ると、カクヤスが92.2%、22年3月1日付で合併した連結子会社ダンガミ・サンノー(旧ダンガミ、サンノーの合計)が6.6%、乳製品販売の明和物産が1.2%となっている。

 売上区分別の構成比では、主に飲食店へ販売する「業務用」が464億円で54.3%、一般家庭やオフィスなどへの「宅配」が206億円で24.1%、店舗での来店顧客への販売である「POS」が171億円で20.1%、「卸その他」が12億円で1.5%だった。特筆すべきは、宅配およびPOSからなる「家庭用」の比率が従来の約30%から44.2%に増加した点だ。

 利益面では営業損失が33億円(前期が26億円の赤字)、経常損失が8億円(同17億円の赤字)、当期純損失が28億円(同16億円の赤字)で、増収・減益となっている。

 M&A(合併・買収)によるコストおよび人件費増、コロナ禍における緊急事態宣言やまん防による休業要請や酒類の提供停止、時短営業等の影響を受け、大手飲食チェーンを中心としたBtoBの売上高が減少。BtoCによる損失の穴埋めに向け、同社初のテレビCMを打つことによる広告宣伝費などが販管費を押し上げ、減益となった格好だ。

「業務用」の回復に向けた「三層物流」体制とは

 今期のカクヤスグループは、コロナ禍で伸び悩んできた「業務用」の売上回復をめざす。そのために、①三層物流体制の完成による新規顧客の獲得、②増加傾向の業態・エリアへの営業活動拡大、③酒類以外の取扱い商材の拡大、と3つの施策を実施する。

 ①の「三層物流」とは、従来の「二層物流」を拡大したもので、家庭用向け宅配枠の最大化と業務用復調時の配達網整備を目的とした、同社独自の物流体制だ。第一層は業務用配送センターからの大型車両によるルート配送、第二層は業務用小型倉庫から業務店向けに即日配送を行う。そして第三層では、店舗まわりの家庭および店舗に対する小型倉庫からの即日配送を行う仕組みである。

 具体的には、アフターコロナにおける業務用回復時のために第二層である業務店向けの配送網を設け、業務用商材の集約および即配を実現する「即配型の業務用小型倉庫」の新設を進める。都内環状八号線内側での三層物流を上期中に完成させ、都心の繁華街エリアへの更なる浸透を図る。

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