SPA(製造小売業)型居酒屋、エー・ピーカンパニー米山久社長

2011/02/15 06:26
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 エー・ピーカンパニー(東京都/米山久社長)という企業がある。

 飲食店経営を主とする外食企業で、居酒屋「わが家」「じとっこ」「塚田牧場」「芝浦食肉」「築地十七代目紀ノ重」など10業態78店舗を展開している。

 2010年度の業績は売上高約60億円、2011年度の目標を90億円に据え、2012年の株式上場に向けて動き出している。

 

 今年41歳の若手経営者、米山社長の講演を聴講する機会があり、とても面白かったので、抄録する(2月7日@ベルサール八重洲)

 

 「2004年に居酒屋『わが家』を始めた。名物料理となる食材を探し求めていた時に『みやざき地頭鶏』と出会いその素晴らしさに感動した。そこで宮崎県に農業法人のエー・ピーファームを設立し、自社養鶏場と加工センターを開設。そこから当社の店舗に直接商品を納入する仕組みをつくり、地鶏の仕入れ価格を2分の1に引き下げることに成功した。エー・ピーファームは4年後には自社養鶏場とは別に13農家を組織化できるまでに力をつけている」

 

 「同じ流れの中で、宮崎県延岡市の島野浦で揚がった鮮魚をその日のうちに首都圏で食べられないかと考えた。当社では『今朝ドレ鮮魚』と呼んでいる差別化商材だ。朝に揚がった鮮魚を当日の営業に向けて仕込みをするためには、宮崎空港発午前8時30分の便に乗せなければいけない。どうしたか? 漁師さんにお願いして出港の時間を4時間30分前倒しにして午前2時に変えてもらった。漁師さんはいままでの日常生活が変わるので、拒否するものと予想できたが、通いつめ話を繰り返し、1船の漁獲を丸ごと買い取る、収入が1.5倍になるなど保証して、信頼関係を構築することでお互いによい取り組みができるようになった」

 

 「当社がめざすのは、総合居酒屋ではない。名物料理をまず1品決め、それに専心する。平均点を高くするのではなく、何か一つを尖がらせることが大事だと考えるからだ。従業員は、往々にして『こんなメニューがほしい、とたくさんのお客様に言われた』とメニューを増やす方向に動きがちになるものだが、そんなお客様はたくさんはいない。イレギュラーな意見は入れない。あれもこれもはやらない」

 

 「店長には商品を熱く語ってほしい。ニコニコ笑顔の接客なんかいらない。むしろ、『これうまいからさ、食ってみてよ』といった具合に多少がさつでもいいと考えている。そんな『地鶏バカ』『魚バカ』『ホルモンバカ』が当社には増えているので頼もしい限りだ」

 

 「ドリンクメニューにもコンセプトをつくることが大事だ。そのためには、扱う商品の蔵元の考え方や造り手の思いを理解しなければいけない。次に、当社のことも理解していただかなければならない。そしてビジョンを共有し、協業するような気持ちで酒類を扱う。小玉醸造(日南市)、渡邊酒造場(宮崎市)、藤本本店(東臼杵郡)、古澤醸造(日南市)、尾鈴山蒸留所(児湯郡)、松露酒造(串間市)、都農ワイン(児湯郡)などの仲間をつくってきた」

 

 「もっともっと斬新な考えで、一次産業にも二次産業にも首を突っ込みたい」と語る米山社長とエー・ピーカンパニーの今後に注目したい。

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