ふつうに暮らすから新しい需要が見える
『とらばーゆ』『フロム・エー』『じゃらん』などリクルート(東京都/柏木斉社長)社在籍の20年間で14のメディアを開発したのは、経営コンサルタントのくらたまなぶさんだ。
くらたさんは、自著『MBAコースでは教えない 「創刊男」の仕事術』(日本経済新聞社)の中で、良い雑誌をつくるための奥義を披露している。
その通りと、膝を打ったのは、「ちゃんとふつうに生活すること」というノウハウだ。
一見、雑誌づくりとは、まったく関係のない「ちゃんとふつうに生活すること」こそがよい雑誌づくりにとっては重要なのだという。
「起きて顔を洗う。歯を磨く。そこらじゅうに、選んで買った(はずの)商品がある。牛乳を飲む。昔は雪印だったよなあ、なぜ雪印からこれに変えたんだっけ。新聞を読む。なぜA新聞なのか。テレビをつける。なぜいつも朝はBチャンネルを見てるのか。(中略)服を着る。靴をはく。玄関を出る。歩く。駅前でティッシュを受け取る。電車に乗る(後略)」。
そういうふつうの生活をしっかりと送るなかで身体から沸き起こる喜怒哀楽の感情を冷静に見つめたところに雑誌の開発ヒントがわんさかとちらばっているというのだ。
そして、これは何も雑誌の創刊に限ったことではない。
流通業が商品開発するに当たっても同じだ。
満員電車に揺られなければ、そこにある不満を実感することはできないし、明け方に起きてなでしこジャパンの応援をしなければ眠気の中での勤務は体験できないし、酷暑になったならば、海やプールに繰り出したり、スイカやかき氷を食べることも大事だ。
面倒であることを理由にそうしたふつうの生活を回避していれば、“ふつうの需要”はなにも見えてこない。
ふつうに暮らす時の喜怒哀楽や不思議、問題は、衣食住の商品開発に当たっては大きなヒントになる。しかも、ふつうの暮らしから派生する商品だから、そのマーケットはとても大きいはずだ。
その意味で、商品開発担当者に向いているのは、一生懸命にふつうの生活を送ることのできる人なのだろう。
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