健康食品・サプリメントの市場規模は1兆3700億円を超える。数あるサプリの中には薬との飲み合わせによって心身に悪い影響を及ぼしてしまうものもある。そうした危険な飲み合わせを防止すべく、日本健康食品・サプリメント情報センター(東京都/田中平三理事長:以下、Jahfic)は、2022年4月に「薬とサプリの相互作用チェッカー」 (委託元:同文書院)をリリースした。サービスの運用状況などをJahficに伺った。
「薬とサプリの相互作用チェッカー」で飲み合わせをチェック
近年、健康増進を目的に健康食品やサプリを摂取する人が増加している。調査会社インテージによると、2022年度の国内健康食品・サプリメント市場規模は1兆3700億円を超える。市場拡大に伴い、懸念されるようになっているのが、サプリや健康食品の「飲み合わせ」の問題だ。サプリ・健康食品と薬を併用すると、その組み合わせによって人体に好ましくない影響が出る場合があり、なかには慢性疾患の治療を妨げてしまう例もあるという。
薬との飲み合わせで危険な例としては、青汁がある。青汁はビタミンやミネラルなどを豊富に含み、健康と美容に効果があるとされる。この青汁と一緒に飲んではいけないのが、血を固まりにくくする薬の「ワルファリンカリウム」だ。青汁に豊富に含まれるビタミンKが抗凝固作用を弱めてしまうからだ。
サプリとして使われる植物「セント・ジョーンズワート」も同様に飲み合わせには注意が必要だという。セント・ジョーンズワートは、気分を安定させる脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量を増やす作用があり、軽度から中等度の抑うつ症状の治療に効果があるとされる。しかし、セント・ジョーンズワートは抗うつ剤や経口避妊薬といった多くの薬剤の作用を弱め、副作用を増加させるおそれがある。
そうした危険な飲み合わせを防ぐべく、一般社団法人のJahficは2022年4月に「薬とサプリの相互作用チェッカー」をリリースした。検索窓に薬名(一般名)とサプリメント・食品名 (素材や成分)を入力すると、危険な組み合わせかどうかを教えてくれるというサービスだ。
飲み合わせの危険性を消費者に広めるには
薬とサプリの飲み合わせによるリスクは、医療従事者にとって有名な事例でも消費者は知らない場合が多い。誇大広告を防ぐために商品のパッケージや広告には表示規制がされているが、それでも「治療中の病気が治る」と信じてサプリを積極的に飲む消費者も少なくないという。
その理由として「薬とサプリの相互作用チェッカー」の運用元であるJahfic事務局の企画開発部門の担当者は、「病気を治療中の方の中には、『薬だけでは心もとない』と、わらにもすがる思いでサプリに頼る方もいます。しかし、サプリとは本来、健康な方が健康を維持するために飲むもの。飲み合わせが原因で病気の治療を妨げたり、下痢などの症状を引き起こしたりすることもあるので注意が必要です」と話す。
部門担当者は、本来であれば消費者の購入窓口となるドラッグストアの店内で飲み合わせに関する注意を喚起してもらうのが望ましいが、実態としては難しいと言う。消費者の関心が最も高いのは商品の有効性であり、ドラッグストアとしてもその部分を訴求したいからだ。
「一部のドラッグストアにはご理解をいただき、健康食品の有効性とともに飲み合わせの危険性をパネルに掲げるなどの取り組みを行ってもらっています。ですが、そうした情報は“前向きな情報”ではないため、情報提供の優先順位としては低いお店が多いのが実情です」(部門担当者 )
そうした状況を踏まえ、部門担当者「薬とサプリの相互作用チェッカー」の必要性を説明する。
「健康食品・サプリのメーカーは、当然ですが薬との併用を前提に商品開発をしているわけではありません。特定保健用食品や機能性表示食品といった制度ができて提供する側の体制は整っていく一方で、消費者には飲み合わせの危険性が浸透していないという状況に危機感を感じています」(部門担当者)
2022年4月にサービスをリリースしてから半年以上経つが、消費者にはまだ十分に浸透していないと部門担当者 は嘆く。一方で、医療従事者には周知が進んでいるそうで、サービス登録者のアンケートでは医師や薬剤師の登録が多いという。医療従事者が患者に対してサービスの紹介を進めていけば、少しずつ消費者に浸透していくだろう。
部門担当者は最後に「薬とサプリの相互作用チェッカー」の利用者へ向けて注意を促す。
「サプリは簡単に手に入る身近な商品ですが、一般的な食品とは異なるものだという意識を、とくに治療中の人や服用中の人は持つべきだと思います。そして『薬とサプリの相互作用チェッカー』はあくまでも情報提供の1つであり、診断や治療行為ではないため、危険な組み合わせだという結果が出た場合、まずは医師や薬剤師に相談していただきたいです」(部門担当者)