顧客行動を知ることで、店舗に何が起きるのか?
店頭における顧客行動を分析すべき
顧客購買行動の把握は小売にとって大きな課題だ。顧客体験を取得し、分析し、進化させるにはどうすれば良いのだろうか。
購買行動は、大きく計画購買と非計画購買の2つに分けられる。計画購買とは、必需品のようにすでに買うものが決まっている場合の購買行動だ。そのため、店舗は必要なものがストレスなく短時間で買えることが重要になる。 全米大手の小売チェーンのホームデポ(Home Depot)はそんな計画購買のニーズに徹底的に応えた店舗設計を行っている。自宅から欲しいものが店舗にあるか確認でき、店舗にない場合は取り寄せができる。顧客は必要なものを確実に購入することができる。
しかし、客単価は計画購買だけでは上がらない。ホームデポでも、衝動購買を促し非計画購買によって客単価を向上させている。非計画購買には、純粋衝動購買のほかに、想起衝動購買、提案衝動購買、クーポンなどで設計する計画的衝動購買がある。小売業には、これらをうまく設計するための知識や知恵が問われる。そのために顧客行動の分析は必要だ。
近年デジタルカメラとwi-fiによって、リアルタイムに顧客行動を取得するシステムを導入するチェーンが増えている。顧客が売場に何秒滞在したのか。どの棚を見たのか。どの商品に触り、最終的に購買したのか。さらには推定の年齢性別などデモグラを知ることも可能だ。
たとえば、ある期間に24人が触った商品が2つあったとしよう。Aという商品が20個購入され、Bという商品が14個しか購入されていない場合、Bには購買を阻害する問題が隠れていると考えられる。分析によって、商品の存在価値や売場でのポテンシャルを知ることができるのだ。
顧客体験の価値に多くの人が気づいている
Amazonの無人コンビニ・Amazon Goも、AIによって顧客行動を把握する取り組みのひとつだ。注目すべきは商品パッケージの変化だ。18年の開店当初は、数字や画像認識用のドットがついた味気ないものだったが、19年になると商品の素材の魅力を伝えるものに進化し、顧客体験のテストを行っていることがわかる。AIは商品も進化させることができるのである。
同じくアメリカで展開する「B8ta(ベータ)」は、出店者側が家賃を払ってデジタルガジェットなどの商品を置く、販売を目的としない店舗だ。それでもメーカーが魅力を感じるのは、顧客に商品を触れさせる単価(CPE)がネット広告(CPA)より圧倒的に安く、効率的だからである。顧客の行動データはカメラやセンサーで常に収集されており、正確にリアルタイムにメーカーにフィードバックされている。顧客体験の分析はいかに価値があるのか、理解できる事例のひとつだろう。
このような取り組みは国内でもはじまっている。渋谷PARCOとキャンプファイヤーが共同運営する実証実験ショールーム「BOOSTER STUDIO」は、プロトタイプやソーシャルグッドな商品に触れられる「売らない店舗」となっている。
売場や顧客をトラッキングすることで、定性調査では見えなかった顧客の真の姿を知ることができる。たとえば、定性では計画購買だと答えた顧客が、実際は売場で競合商品と迷った上で購買しているといった、本人も気づいていない本当の姿を洗い出すこともできるのだ。
ただし、データはファクトでしかない。それを情報に進化させるところまではAIにもできるが、知識や知恵に飛躍させるのはビジネスを理解した人間でなければならない。デジタル時代の小売業に求められるのは、知恵を生み出す力なのではないだろうか。
各プログラムの詳細
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