無人営業も行う、福岡の顔認証入退店の八百屋 これまで万引きゼロの理由
「ヤオチョク」運営の仕組みは広がるか

現状、八百屋ノ直売所でのスタッフの主な業務は、袋詰めなどバックヤードでの作業と商品の追加補充。午前中に作業して棚に商品を並べ、午後は数回、八百晴に野菜や果物を取りに行って補充する。日曜日は八百晴が定休日で、松尾氏が対応している。基本的に接客にあたる人員はおらず、かなりの時間帯が実質無人の状態だ。年配者が午前中に買物することが多い地域だが、駅前の立地ということもあり、客足が多いのは夕方以降。「普段から通勤で交通系ICカードを使っているような機械に慣れている世代が、帰宅途中に立ち寄ってくれている」(松尾氏)
最大の課題と考えているのは、やはり商品説明や調理・食べ方のアドバイスなどを行う接客の問題。「自分が店舗に立ち商品説明をすることで、売上を2倍にすることは可能だと思う。しかし、それをやれば八百晴の売上が下がる。八百屋ノ直売所の当面の売上目標は8万円。いかに無人の状態で達成に近づけるかを考えていきたい」(同)
八百晴で毎日やっているようなお客とのやりとりを無人店舗で展開することが理想だ。八百屋ノ直売所を運営して、浮き彫りになったのは、やはり対面接客の強みだった。
「味や食べ方が気になる人が多く、聞かれることが多いのが八百屋の仕事。実に人間臭い。それをデジタルの活用で展開できればと思う。そこで検討しているのが、動画を活用したライブコマース。八百晴での接客と同じようなことが八百屋ノ直売所でもできるのではないかと考えている」(同)

LINEやInstagramを活用した情報発信はすでに行っており、割引クーポンの配布やフォロワー対象のイベントやキャンペーンの開催も考えている。「FACE-SYSTEM」の顔認証システムにはPOSの機能もあるため、顧客データの収集ができる。
「日頃の来店に対するお礼も言えていないので、たとえば50回の来店につき、50円の割引クーポンを配布するようなサービスをPOS連携で提供していきたい」(同)
これまで八百晴に通ってくれていた常連客が、隣駅にある八百屋ノ直売所の方が住まいに近いとして、利用が増えている傾向もあるという。まずは原町本店の経営を安定させてからになるが、その後は、この自分たちが営む店舗を増やしていく以上に、八百屋ノ直売所、略して「ヤオチョク」を運営する仕組みを広げることを期待しているという。
「自分は朝倉の農家が作る野菜と果物に惚れ込んでいて、朝倉市場での仕入れにこだわって販売している。鮮度を考えると、野菜や果物を流通させられるエリアは限られてしまう。しかし人手をかけずに産直品を『八百屋』のスタイルで販売するモデルは場所を問わず通用するだろう」と松尾氏。八百屋ノ直売所のファサードには「Produced by YAOHARU」とある。確かに、これをモデルケースとして、他の青果店がスバチャの顔認証ソリューションを導入して展開することもできそうだ。これからを注視していきたい。





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