無人営業も行う、福岡の顔認証入退店の八百屋 これまで万引きゼロの理由

吉牟田祐司

盗みや迷惑行為を働いた客は入店拒否に

顔認証システム
入口の顔認証システム

 八百屋ノ直売所に入店するには、ドアに設置されたスマホ端末で顔認証を行う必要がある。インカメラに顔を向けて、認証されれば画面にドアロックを開錠するボタンが表示され、それを押して入店する仕組みだ。認証は1人ずつ。サングラスやマスクなどで顔が隠れている場合は認証されない。事前登録や予約は不要。自分のスマホでQRコードを読み取るような手間も必要ない。認証された顔はシステムに記憶され、盗みや迷惑行為を働いた客は認証NGに設定して、次回以降の来店を拒否することができる。

 2019年頃から無人餃子販売店が登場し、コロナ禍で爆発的に増えたが、窃盗被害が相次ぎ、閉店が後を絶たない。対して八百屋ノ直売所は開店以来、盗難が発生したことはない。顔認証セキュリティ導入の成果を「防犯カメラだけの店舗より抑止力が効いていると感じる」と松尾氏は語る。また「店舗として、バラエティに富んだ品ぞろえを提供できる形にたどり着けた」と続ける。

「会員登録などは不要で誰でも自由に出入りできる気軽さがある。一方、来店した個人をAIで特定でき、迷惑客や問題を起こした客が現れれば、入店お断りにできる。利便性が高く、高価な商品も置ける安心感がある」(松尾氏)

 例えば農家が無人販売所でコメ5kgを取り扱う場合、それが窃盗にあえば損失は大きい。そうしたニーズを考え、「八百屋ノ直売所を農家さんの販売場所として提供し、この店舗に持ち込んで販売してもらうことも考えている」と松尾氏はビジョンを明かす。レジがあることで販売価格を細かく設定でき、お釣りを出すこともできる。代金を料金箱に入れる形式であれば、どうしても区切りのよい数字での料金設定になってしまうが、そのデメリットも解消できる。

八百屋ノ直売所 原町本店の店内
八百屋ノ直売所 原町本店の店内

 八百屋ノ直売所の店舗面積は、有人の八百晴とほぼ変わらない。2台のセルフレジが設置され、1台はキャッシュレス専用機だが、もう1台は現金払いもできる。1日あたりの来店客は約100人で売上は6万円前後。松尾さんによると八百晴はその約3倍の売上があるが「スタッフさんの数も3倍」という。

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