注目のパワーアシストスーツは普及するのか=国際ロボット展レポート
理科大発のベンチャーが価格を抑えた新製品を発表
2000年から人工筋肉を使用したウェアラブルロボット「マッスルスーツ」の研究開発を進めてきたイノフィス(東京都/古川尚史社長)は、「人のためのロボット」の創造をめざし設立された東京理科大学発のベンチャー。同社では、従来モデル比で3分の1以下の136,000円(税別)で19年11月に販売開始した「マッスルスーツEvery」を中心に展示していた。
従来モデル同様、空気を駆動源とする人工筋肉により、25.5㎏重の最大補助力で、腰への負荷軽減から、日常の力仕事までをサポートする機能をもつ。本体重量はマッスルスーツ最軽量の3.8㎏。10秒あれば、装着完了できる。
既存技術を生かしPAS事業に参入
自動車関連から、鉄鋼、鉄道、航空・宇宙、建設機械・農機、風力発電など、さまざまな領域でモノづくりを支えるジェイテクト(愛知県/安形哲夫社長)では、電動パワーステアリングで培ってきた技術を活かし、パワーアシストスーツ事業に参入。18年8月から「J-PAS」の販売・リースを行っている。リモコンで、力の強さやスピードを4段階で選択できるようにしているのが、同社の特徴だ。
中出力モデルの「J-PAS LUMBUS」は、本体重量4㎏、稼働時間は4時間以上。最大補助力は10㎏重、業界最小クラスの腰幅(44㎝)の軽量・コンパクトモデルだ。ショルダーベルトを肩にかけ、腰部ベルトを留める。胸部ベルトを留める。サイズを調整する。の3ステップで着脱できる。
当日会場で、人工筋肉によるアシスト機能付きのPASを装着し、20kgの重量物を持ち上げてみたが、装着の前後での違いといえば、「心持ち持ち上げやすくなった」と感じる程度だ。
ただ、ふだん重い荷物を運び慣れていない人には、確かにサポートになるという感触があった。太ももの周りに密着した人工筋肉が、太ももと腰が一体になるように働き、腰に負担をかけることなく荷物を持ち上げられるからだ。荷物持ち上げ用の強制ギブスといったほうがわかりやすいだろうか。PASを装着した状態に慣れれば気にならなくなるのかもしれないが、異物を背負わされているという感覚はぬぐえない。荷物の上げ下げ専門の作業ならともかく、1日中、PASを身に付け店内を自由に動き回るという姿は、残念ながらまだ想像することはできなかった。