商品の仕入れ、開発にもDXの波!? 注目の新サービス「デリズマート」に見るバイヤーの未来
「高付加価値食品」を軸に
売場の提案力を高める
昨今、食品スーパー業界でもDXに取り組む企業が増えている。在庫発注支援システムや購買データ分析など、自社のオペレーションや販促業務におけるデジタル活用は進みつつある。こうしたなか「デリズマート」は、自社内にとどまらず、食品メーカーと連動しながら商品取引をデジタル化させるものだ。
食品スーパーの商品仕入れに関連するプラットフォームサービスはすでにいくつか存在する。たとえば、農業総合研究所(和歌山県)は、生産者と食品スーパーの直売所を結び付ける「農家の直売所」を運営するほか、スタートアップ企業のウーオ(広島県)は20年9月、提携漁港・産地で水揚げされた鮮魚を、鮮魚バイヤーがアプリから注文できるプラットフォーム「UUUO」を提供している。
対して、デリズマートが主要領域にあげるのは「話題の食品ブランド」すなわち「高付加価値食品」の取引きだ。
昨今の原材料価格やエネルギー価格など各種コストの増加が食品小売企業の収益性を圧迫するなか、価格競争には限界がある。こうしたなか食品スーパーでは、他社にない独自の付加価値ある商品によって差別化を図る必要性がこれまで以上に生じている。デリズマートはそうした商品の買い付け、仕入れにフォーカスを当てたサービスと言える。
食品スーパーのMDは
いまや「ファストファッション」
加えて「デリズマート」で特筆したいのが、将来的に食品スーパー各社のオリジナル商品開発とそのサプライチェーン管理までサポートすることを視野に入れている点だ。
現在、「デリズマート」はすでに約45社の食品ブランドとの提携を結んでいる。これらのほとんどが、たとえばブランド野菜や果実など、付加価値の高い原料を自社で持ち、加工・販売しているサプライヤーだ。これらサプライヤーとのマッチングだけでなく、その原料を使ったオリジナル商品の開発も斡旋する。さらにその過程でのサプライヤー、提携工場との取引もサービス上のマイページでまとめて管理し、製造数量の調整、追加発注などの業務の効率化、最適化を図れるようにするという。
上村氏は「現代は食の多様化が進み、流行の浮き沈みも早い。そんななか、食品小売企業ではまるでファストファッションのように、トレンドに合った商品を次々と、低コストで提供していく必要がある。こうしたなか強さを発揮していくには、取引先をスピーディに開拓し、データ活用しながら商品の仕入れ、開発を行っていく必要がある」と説く。