ドラッグストア大手(DgS)大手のウエルシア薬局(東京都/松本忠久社長)は10月21日、千葉県千葉市美浜区に「ウエルシア イオンタウン幕張西店」(以下、幕張西店)を開業した。生鮮・総菜を含む約150坪の食品売場を備えるほか、併設の調剤薬局には数千万円規模の最新調剤機器を導入。まさに「フード&ドラッグ」を可能な限り深掘りしたフォーマットとなっている。オープンしたばかりの店内の様子をレポートする。
売場から垣間見えるウエルシアの食に対する”強い意思”
幕張西店はJR総武線「幕張本郷」「幕張」、JR京葉線「海浜幕張」の各駅から直線距離でおよそ1~1.5kmほど離れた場所に立地する。イオングループの本社にもほど近い、まさに”お膝元”での出店である。
店名からもわかるとおり、イオンタウン(千葉県/加藤久誠社長)が同日開業したNSC(近隣型ショッピングセンター)「イオンタウン幕張西」の核店舗としてオープン。これはウエルシア薬局としては初めての形態だ。なお、同NSCにはウエルシアのほか、コインランドリーやフィットネスジム、クリニック、さらに来年夏には約180床を有する「幕張病院」も併設開業する予定となっている。
実は当初の計画ではイオン系の小型スーパー(SM)「アコレ」とともに共同出店する予定だったという。しかし、「DgSの新しいかたちを求めるにあたって、(ウエルシアとしての)食の強化が重要なテーマの1つ」(松本社長)というウエルシア薬局側の強い思いから、共同出店ではなく約1400㎡のスペースに単独出店することになったという。
実際、食品強化の姿勢は売場を見ればすぐに伝わってくる。およそ150坪の食品売場では、昨今のDgSの品揃えとしては当たり前になりつつある菓子、加工食品、日配品、酒類のほか、青果・精肉・鮮魚の生鮮3品と総菜もカバー。いずれもコンセッショナリーではなく直営だが、店内に加工スペースはなくすべてアウトパックとなっている。
このうち青果は近隣の船橋市場から仕入れた新鮮な野菜や果物のほか、カットサラダやカットフルーツなど約100SKU取り揃えている。
精肉はイオンフードサプライ(千葉県/戸田茂則社長)からの供給品を中心に、「純輝鶏」「うまみ和豚」などイオンブランドの商品が並ぶ。鮮魚は塩干が中心で丸物や刺身などは置いていない。
総菜は「オリジン弁当 検見川浜店」から米飯や弁当、総菜パックなどを仕入れて展開。また、チルド総菜は既存店でも導入実績のあるセコマ(北海道/赤尾洋昭社長)の冷蔵パスタや焼き鳥パックなどを販売している。
投資額は数千万規模 最新鋭の機器を揃えた調剤薬局
食品のほかに注目したいのが併設の調剤薬局だ。調剤室には「数千万円はくだらない」(調剤担当者)という最新鋭の機器が並ぶ。医薬品を棚から自動でピックアップするもの、指定した量で散剤(粉末薬)に加工できるもの、処方された薬が正しくパッケージされているかを3D画像で瞬時に確認できるものなどを装備。調剤における「対物」業務の効率化を図ることで、薬剤師が利用客とより深くコミュニケーションとる「対人」業務の深化につなげたいねらいだ。
さらに、調剤室にはDgSとしてはめずらしい無菌調剤室(主に高カロリー輸液や医療用麻薬の調剤に用いる)も併設。これについては近隣にあるほかの薬局との共同利用も行う予定だ。
PBを魅力を大々的にアピール 管理栄養士による健康相談にも対応
店内ではこのほか、ウエルシア薬局のPB「からだWelcia」(食品など)・「くらしWelcia」(日用雑貨など)の専用コーナーを展開。後者についてはサンプルを設置し、スポンジの手触りやトイレットペーパーの香りなどを確かめられるようにしている。
また、花王の協力のもと、同社の洗剤や柔軟剤の「量り売りコーナー」を期間限定で設置。容器を捨てずに洗剤を継ぎ足すことでプラスチックごみの低減につなげるというユニークな取り組みだ。
さらに店内に併設したカフェスペース「ウエルカフェ」で管理栄養士による健康栄養セミナーなどを開催するほか、売場内に健康測定コーナーを設けて食生活の改善を提案するといった取り組みも実施している。
このように幕張西店は、「食品強化」というウエルシア薬局が重要視するテーマを売場で体現しつつ、調剤薬局の進化や、店頭を介した顧客コミュニケーションの深化と健康提案の深掘りを図ろうとする戦略的な店舗である。顧客にとってはワンストップショッピングの利便性を享受できると同時に、健康面でも手厚いサポートを受けられるという点でメリットは大きい。
ウエルシア薬局が幕張西店を皮切りに、地域の医・食・住をどのようにカバーしていくのか、その戦略の方向性に注目が集まる。