「手間のかかること」が差別化に!? オオゼキの新店「調布店」の売場をレポート
品揃えに垣間見える「個店主義」
鮮魚は売場のトップはマグロの柵とお買い得の刺身アイテムを特設とし、目的買い、衝動買いの双方に合わせた展開となっていた。その隣の平台ではごちそうメニューをテーマとしたマグロの刺身、マグロのカマ、キャビア、毛ガニなど高単価アイテムがずらりと並ぶ。
そのほかも、丸魚や切り身を中心に魚種の多さが際立つ。一方で、刺身の定番コーナーは冷ケース約6尺に20アイテムをコンパクトにまとめて展開するなど、無理な拡販をせず、値下げや廃棄で利益率を下げないような工夫が感じられた。
精肉と鮮魚で注目したいのが、加工品や関連商材の使い方である。精肉では、加工品や関連商材の展開がみられなかったのに対して、鮮魚では鮭のフレークをはじめ、塩辛や珍味系、魚卵でも明太子が10アイテム以上を展開するカテゴリーが複数存在していた。個店主義を標榜するオオゼキならでは特徴がこの部分でも垣間見られる。
正社員比率70%でも高収益!
近年コスト増の問題が業界全体の課題になっている。オオゼキの正社員比率は約70%と業界屈指の高さだが、販管費率は21.0%、営業利益率は5.6%(2023年2月期)とコストコントロールができており、高収益を確保している。オオゼキ調布店を見る限り、オオゼキはこの流れを踏まえた取り組みを持続しているようである。むしろ、競合他店がコスト増で苦しみ、ローコストオペレーションをねらった省力化、効率化をめざすのであれば、さらにオオゼキの競争力が増す可能性が高いだろう。
店内加工での徹底、常に顧客の要望を受ける姿勢の訴求、また、前編で解説したようにオオゼキ調布店では試食販売も行うなど、オオゼキではあえて「手間のかかること」を明確に打ち出し、競合店との差別化を図ろうとしている。店内においても、商品の取り置きや取り扱いの要望サービスが売場に掲示されており、お店の特徴としてアピールされていた。顧客ニーズを細やかに汲み取りながら、自社の取り組みの循環を構築する、というのがオオゼキの基本戦略になっているようだ。
今回のオオゼキ調布店は2021年4月の「オオゼキ経堂駅前店」以来、約2年ぶりの出店であり、調布店オープンの翌月となる23年5月には東京都品川区に「オオゼキ戸越六丁目店」を新規出店している。今後の出店加速にも注目していきたい。