九州地盤のディスカウントストアチェーンのトライアルカンパニー(福岡県/楢木野仁司社長)が今後の成長戦略を明らかにした。複数業態戦略から競争に勝てる強い1つの業態に絞って多店舗化を進め、今後3年で210店舗を出店する。3年後の2016年3月期売上高は6225億円を計画している。
トライアルの別の顔
トライアルカンパニーの2013年3月期決算は、売上高2784億6800万円(対前期比10.1%増)、経常利益は49億600万円(同8.7%増)で、7期連続増収、4期連続の増益となった。同社はこの10年で企業規模を実に13倍に拡大させており、まさに破竹の勢いで成長してきた。
同社の強みは、粗利益率約18%、販管費率約16%で運営する超ローコスト体質だ。経常利益率は2%弱と高くはないものの、これまで居抜き物件中心に出店を重ね、早い投資回収で資産を効率的に回しながら売上を急拡大させて、利益の絶対額も増やしてきた。
ローコストオペレーションを支えるのが、同社の高度なIT戦略だ。同社は情報システム子会社を中国に持っており、そこで約500人の中国人エンジニアを雇用し、システム開発を行っている。そこには小売業ではなく、IT企業としての顔がある。たとえば自社開発した現場用携帯端末「PACER」。情報端末と業務端末、音声通信端末の機能を併せ持っており、受発注業務だけでなく、商品バーコードにかざすだけで、過去と現在の販売実績と全店順位などがわかるほか、レイバースケジュールの変更指示などもスタッフの端末に送ることができ、業務の効率化に役立っている。
一昨年10月にはシリコンバレーに現地法人・トライアルリテールエンジニアリングを立ち上げ、ITシステムの開発販売も行う。
1200坪中型店にフォーカス
さて、これまで同社は、居抜き出店をメーンにし、その出店フォーマットもGMS(総合スーパー)跡地などの大型店と、売場面積1200坪程度の中型店、小型のバラエティストア、コンビニエンスストアサイズの4つのフォーマットを展開してきたが、この出店フォーマットを転換。最も競争力が発揮できる1200坪の中型店にフォーカスし、建物を新設するかたちでの出店へと変える。
その背景にあるのが、(1)店舗の標準化により多店舗化を進めること、(2)化粧品など清潔感が要求されるカテゴリーを売るのに適した売場環境をつくること、そして、(3)少子高齢化と人口減少化社会の到来と競争激化により、小商圏高占拠型のフォーマットが強みを持つと考えていること、の3点だ。当初は1200坪、今後1500坪、1800坪と商品力が高まるにつれ大型化していくことが予想されるが、基本的には、コア事業に経営資源を集中し、ドラッグストアに周りを囲まれても負けない、競争力ある業態をつくり上げて勝ち残る戦略だ。
具体的には、今後3年間で210店舗を新規出店し、16年3月期末の総店舗数は368店舗、売上は6304億円を予定している。
商品政策では集客のコアとなる食品、ヘルス&ビューティケアをいっそう強化する一方で、インテリアやペット、家電、衣料、カー用品などを低価格中心にラインロビングして、専門店から市場を奪い取る。
そのために、同社では取引先とチームを組んでカテゴリーマネジメントとサプライチェーンマネジメントに取り組む。同社は昨年、これまで推進していたPB(プライベートブランド)戦略を転換し、NB(ナショナルブランド)主体の売場へと転換。カテゴリー別の戦略決定と実施においてメーカーの方が情報を持っていることを認め、お客にとって有益な売場を協業でつくる考えだ。