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シャディ「亜州太陽市場」千歳船橋店がオープン ファミリー層がメーンターゲットの理由とは

ラオックスグループのシャディは7月8日、アジア食品専門店「亜州太陽市場」2号店となる「千歳船橋店」(東京都世田谷区)をオープンした。もともとはラオックスが昨年1125日、「亜州太陽市場」1号店となる「吉祥寺店」を出店し、展開をスタートした事業だが、今年5月、子会社のシャディに事業譲渡したもの。2号店でどんな売場づくりが行われているのか、今後のビジネス展望をまとめた。

大手居酒屋チェーンの撤退跡に出店した「亜州太陽市場千歳船橋店」。周辺は飲食店が多く、商店街にも近い繁華街立地

吉祥寺店と比べ、1.9倍の広さで2000種類を取り扱う

 「亜州太陽市場」千歳船橋店は、小田急線の千歳船橋駅から徒歩1分の駅前立地。周辺は住宅地で古くから住む高齢者と、「亜州太陽市場」がメーンターゲットとする近年増加している移り住んだ30代、40代のファミリーが混在するエリアだ。

 売場面積は256㎡で「吉祥寺店」の約1.9倍に拡大、品揃えも約1.4倍となり、アジアの14の国と地域の食品約2000種類を展開している。

② 店内は白を基調とした明るい空間。商品のパッケージが原色のカラフルなものが多く、商品が映える

 亜州太陽市場は、「国内最大級」を誇るアジア食品の専門店。吉祥寺、千歳船橋、そして3号店で予定している浜田山を出店エリアに選んだように、繁華街立地で単身者を狙うフォーマットではない。「ファミリー層」をメーンターゲットに、お菓子やインスタントラーメンをフックにしながらも、調味料や素材を深い品揃えで提供し、「アジアの味を家庭で調理し再現してもらう」のが狙い。

 地域別では、「東南アジア」が31%と最も多く、次いで「中華」28%、「韓国」26%と続き、「南アジア」は15%となっている。

 今回の出店では特にインド、スリランカ、ミャンマーといった南アジアを拡充したが、今後は、トルコなどの「西アジア」に地域を広げ、カザフスタン、ウズベキスタンなどの中央アジアも視野に入れている。

 フルーツやハーブなどの生鮮食品を初めて導入し、スパイス、ハーブ、ビーンズなどを集積した南アジアのコーナーも新設、ラインナップを拡充し、コメでは5kgパックも新たに投入した。

 また、アジアンコスメもトライアルとしてコーナー展開、店舗から2㎞圏を対象に、当日配送も「千歳船橋店」から開始し利便性の向上を図る。

国内最大級のお茶、コーヒー売場

約200種類の茶、紅茶、コーヒーを一堂に集めたコーナーを新たに設け、インド、スリランカ、ベトナムなどを強化

 中国1位、インド2位、スリランカ4位、ベトナム4位など、アジアは茶の生産量が圧倒的に多く、コーヒーも2位ベトナム、4位インドネシア、8位のインド、マレーシアと存在感を見せていることから、紅茶、緑茶、発酵茶、フレーバーティなどを大幅に拡充。コーヒーも揃えて、両カテゴリー合わせて9の国・地域の約200種類と、国内最大級の品ぞろえを実現した。

 レトルト食品は12の国・地域の160種類。なかでも1号店で人気のカレーはマレーシアのハラル認証やインドのビーガンも新たに投入し80種類を揃えている。

 インスタント麺も9の国・地域の200種類と豊富な品揃え。タイのトムヤム麺、ベトナムのフォーなど、東南アジアは約70種類と拡充し、フィリピンの焼きそばなど日本ではなじみの薄いアイテムも展開している。

 11の国と地域の300種類を展開する調味料では、使用方法をPOPで紹介、レシピ動画も流して、購入促進に結びつける。

 菓子は11の国と地域の150種類、台湾のパイナップルケーキ、中国のヒマワリの種などを揃えたほか、世界一売れているインドのビスケット「パールG」も品揃えしている。

 また、1号店では品揃えが限られていたビールは11の国と地域から50種類を集めた。アジアのビールはメジャーな銘柄以外はスーパーマーケットなどでは売られておらず、エスニック料理店でも品揃えは限られる。夏場はとくに、来店需要を喚起することに一役買いそうだ。

千歳船橋店から導入したフルーツは冷蔵ケースで出入口に近い一等地で展開。マンゴー、ドラゴンフルーツ、韓国産メロンなどを揃えるがアイテムは少ない

 今回半導体不足のあおりを受けて、冷蔵、冷凍ケースがオープン日に間に合わなかったが、冷凍肉などをはじめ拡充する方針の冷凍食品は160種類を展開する予定だ。また1号店にはなかった、フルーツの取り扱いも行う。

 

地域連携の取り組みと今後の戦略とは

 こうして1号店より品揃えを拡充し深掘りする一方、地域との連携を一つの基軸として重視、千歳船橋の隣の駅である経堂にある人気タイ料理店「タイ屋ソンタナ(SALA SONTANA)」の人気メニューを弁当や総菜の形で販売する。

 なお、1号店では、新大久保の韓国料理・延辺家庭料理店「金達莱(きんたつらい)」の人気メニューを、総菜や弁当の形で同店限定商品として販売していたが、現在は休止している。

 「総菜・弁当は試行錯誤中で『千歳船橋店』で仕切り直し、今後も地元のアジア料理店と組んで展開していく。『亜州太陽市場』はインバウンドが消失し、それをリカバリーするため、立ち上げた新業態の一つ。海外旅行で現地で味わったものを提供し、訪れた場所を想起し旅情を感じてもらうストーリーの詰まった店舗だ。ファミリーが多く住んでいる地域に出店し、週末、スパイスなどを使って本格的な料理を楽しんでもらいたい」(飯田健作ラオックス社長・シャディ会長兼社長)

 商品政策については、オリジナル商品の開発も進めていくが、現地での商品調達にもこだわり、本物・本場のアジアの味を日本の食卓に届ける役目を担う。

カゴを使った商品陳列などVMDにもこだわっている

 実際、1号店の顧客調査の結果、品揃えではポジティブな評価を得ている。一方で、悩ましいのが価格に対する評価だ。顧客からは高い・安くないとする評価が多く、最近の円安傾向もあり悩ましい点だ。飯田社長は「決して価格を軽視することはなく、価格は重要だと考えいるが、あくまでも『バリューフォアマネー』で勝負したい」意向だ。

 これからの店舗展開は、3号店を売場面積175㎡の規模で、「浜田山店」を東京都杉並区に722日にオープン予定。京王井の頭線浜田山駅から徒歩1分で、「千歳船橋店」も駅から徒歩1分、1号店の「吉祥寺店」は徒歩3分。3店とも駅前立地の路面店だ。

 当面の出店は物流の効率化も考えドミナント化を優先。同時に商業施設への出店も考えている。

 「亜州太陽市場」の競合相手としては、「カルディーコーヒーファーム」と「ドン・キホーテ」、イオンの「カフェランテ」などが想定されるが、「亜州太陽市場」はアジアに限定した専門店。

 飯田健作会長兼社長は、アジア食品は今後可能性のあるマーケットと認識しており、リアル店舗についてはフォーマットを確立させながら、店舗の情報発信力も高めて、多店舗展開を図っていく考えだ。

 さらに、「亜州太陽市場」の品揃えや雰囲気を体験することができるメタバース空間の新たなタッチポイント「亜州太陽市場バーチャルストア」もスタートさせた。 

今回強化した南アジアの商品は壁面でコーナー化し、スパイスを充実させている

 エスニックマーケットはアジアがメーンで、スーパーマーケットでも一定の取り扱いがあり、消費者にも認知されている。今後、さらに専門性と情報の受発信能力を高めて、取り扱う地域や品ぞろえも拡充し、リーズナブルな価格で提供することで、需要を喚起し掘り起こすことが求められている。