「ダイヤモンド・チェーンストア」の毎年恒例企画「STORE OF THE YEAR 2022」の投票が1月28日より開始している(投票締め切りは2月11日まで)。投票結果をもとに、2021年で業界に影響を与えた「ストア・オブ・ザ・イヤー」を決定し、『ダイヤモンド・チェーンストア』誌および「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」上で発表する。
2021年にはどのような注目店がオープンしたのか。「ダイヤモンド・チェーンストア オンライン」の掲載記事のなかから、注目度が高かった店舗をピックアップし、紹介する。
~店舗部門~
「ライフグランシップ大船駅前店」(神奈川県横浜市)
ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)が、新たな旗艦店と位置づけ、大型複合施設「グランシップ」の地下1階にオープンした店。海外のメニューや国内各地の名産品を集約したコーナーを売場の各所で展開するほか、大豆ミートやレンジアップ干物といったさまざまな新商品提案にも挑戦するなど、最新のMD(商品政策)を詰め込んでいる。岩崎社長が「将来的には年商50億円台もめざせる」と自信をみせる店でもある。
7月15日には、「グランシップ」1・2階に内に入る三越伊勢丹ホールディングス(東京都)の商業施設内に、ライフの自然派SMフォーマット「ビオラル」のショップもオープンしている。
「イオンスタイル川口」(埼玉県川口市)
イオンリテール(千葉県/井出武美社長)が同社初の本格的なスマートストアと打ちだす店。建て替えオープンした商業施設「イオンモール川口」の核店舗として入居している。
同店では、既存店で実験を重ねてきたデジタル施策を本格導入させているのが特徴だ。全3階に計149台設置したAIカメラや、独自のハンディ端末「AIカカク」、シェルフサイネージなどを活用し、売上向上や販売機会ロスの低減につなげている。
「フーコット飯能店」(埼玉県飯能市)
ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)が、子会社フーコット(同/新井紀明社長)を通じて開発したディスカウント型スーパー「フーコット」の1号店。ヤオコーが開発した新業態として耳目を集め、視察に訪れる業界関係者が後を絶たない。
近隣型ショッピングセンター内のスーパー退店跡地への出店で、売場づくりはヤオコー子会社のエイヴイ(神奈川県)が展開するディスカウント型スーパー「エイビイ」のスタイルをベースとしている。一方で大きく異なる点として、総菜を導入し店内調理品も揃えて低価格で提供する。21年3月には東京都昭島市に2号店を開業予定で、どのようなフォーマットに進化していくのか注目だ。
「ロピア京都ヨドバシ店」(京都府京都市)
ロピア(神奈川県/高木勇輔代表)が出店した京都府内1号店。「京都」駅中央口からすぐという、同社ではこれまでに前例のない都市立地への出店で、家電量販店「ヨドバシカメラマルチメディア京都」を核とする複合商業施設「京都ヨドバシ」の地下2階部分に入居している。
最大の特徴は、「質感」を重視した新たな売場づくりに挑戦している点だ。これまでの店は、大量販売、強烈な価格訴求が特徴であるのに対し、同店は青果部門で1万円の高級メロンを専用ショーケースで販売するなど、質や単品の売り込みを重視したきめ細やかな売場づくりも取り入れている。
「ヨークベニマル仙台小松島店」(宮城県仙台市)
ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)の300坪クラスの都市型小型店の3号店。同社は18年11月に、仙台市内に1号店の「ヨークマルシェ大和町店」をオープンしている。仙台小松島店は、青果・総菜・鮮魚のゾーンにおいて、300坪とはとても思えない売場の広さと賑わい感を訴求する一方、グロサリー売場はコンパクトにしたメリハリのある売場づくりを実践し、より完成度の高い都市型小型店を構築している。
2021年のナンバーワン店舗を決めよう!
投票締切は2月11日(金)まで
▼投票はこちらから
https://diamond-rm.net/store/104585/
「STORE OF THE YEAR 2022」では、店舗部門以外に、商業集積、専門店の計3部門を設置している。ここからは注目の商業施設と、専門店を紹介しよう。
~商業施設部門~
「イオンモールNagoya Noritake Garden」(愛知県名古屋市)
イオンモール(東京都/岩村康次社長)が初めて開業したオフィス併設型複合商業施設。地上6階建ての建物構造のうち、4〜6階部分にオフィススペース「BIZrium(ビズリウム)名古屋」として、共用ワーキングスペースや貸し会議室のほか、名古屋外国語大学のサテライトキャンパスなどが入る。商業施設部分でもフードコートにコワーキングスペースを導入するなど、オフィスと商業施設を融合した施設開発にチャレンジしている。
「セブンパーク天美」(大阪府松原市)
セブン&アイ・ホールディングス(東京都)の総合デベロッパーであるセブン&アイ・クリエイトリンク(東京都/泉井清志社長)が開発したショッピングセンター。「セブンパーク」はエンターテインメント性を追求した施設ブランドで、16年4月に開業した「セブンパークアリオ柏」(千葉県柏市)に次いで2カ所目となる。
施設コンセプトは「LIVE STADIUM~普段の暮らしに・感動・興奮・驚きを~」。メーンホールに約520インチの大型LEDビジョンを導入し、施設各所に設置した約80基のデジタルサイネージからも同じライブ映像を視聴可能にするなど、エンターテインメント性を進化させた施設づくりを行っている。
~専門店部門~
「Standard Products 渋谷マークシティ店」(東京都渋谷区)
※写真は新宿アルタ店
100円ショップ「ダイソー」を運営する大創産業(広島県)が開発した、中心価格帯300円の新業態。21年3月26日に1号店「渋谷マークシティ店」を、同年10月22日に、2号店「新宿アルタ店」を開業している。
生活雑貨をはじめ、収納ボックスなどの住居関連品や食器、バッグ、服飾雑貨などのオリジナル商品を、シンプルで洗練されたデザインで提供。環境に配慮した素材を使った商品も拡充している。
「お菓子ドンキ・お酒ドンキ」(東京都中央区)
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都/吉田直樹社長CEO:以下、PPIH)が開発した新業態。既存店で好調に推移している食品と酒類に特化した店だ。売場面積は2店舗合わせても50坪足らずと小型で、今後の狭小物件への出店にもつなげる。同店を機にPPIHは、化粧品の「コスメドンキ」、辛い商品を集めた「驚辛ドンキ」など、カテゴリーを特化した小型フォーマットの出店を加速させている。
このように2021年は、小売業界では新型コロナウイルス感染拡大直後と比べれば現場の混乱状況は落ち着き、各社が新しい業態や、旗艦店をオープンした年であった。低価格志向やSDGs(持続可能な開発目標)への配慮など、コロナ禍でいっそう高まる意識への対応もスピーディに進めていることがわかる。長期化が予測される感染症との生活において、小売業各社が果たす社会的役割は大きい。22年も小売店開発はいっそう進化を遂げていきそうだ。