「安くてそれなり」を超える!次代のPB 戦略とは

解説:前島 有吾(ローランド・ベルガープリンシパル)、甕(もたい)知行(ローランド・ベルガーコンサルタント)
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消費価値多様化がPB拡大の起爆剤に

 食品小売業界におけるプライベートブランド(PB)商品の重要性が増している。食品スーパー(SM)の食品販売額に占めるPB売上高比率は2012年以来、23年10月に過去最高を記録した(日本経済新聞23年11月14日「小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品」より)。

 しかし、PB拡大の動きはこれまでの歴史を振り返ると、決して特異な事象ではない。実際、日本でセルフサービス式の総合量販店を広めたダイエーは1980年当時、食品を中心に約1万品目のPB商品を扱い、全体売上高に占めるPB比率は約20%だったといわれている。非食品カテゴリーで見れば、1890年代に農村向け通信販売で成長し、1920年代には都市型店舗小売業に進出した米国の総合量販店シアーズ・ローバックは、家電製品、自動車部品、ホームケア用具などのカテゴリーを中心に760アイテムものPBのラインアップを有し、一時はPB比率が95%にまで上っていた。

食品スーパーの食品販売額に占めるPB売上高比率は2012年以来、23年10月に過去最高を記録した(写真はイメージ i-stock/JGalione)

 ではなぜ、ここに来て再びPBに対する需要が高まってきているのか。まず指摘できるのが、消費者価値観の多様化である。

 先に挙げた2社のPBが躍進した時代背景として、当時百貨店・中小零細商店がまだ小売市場シェアの大半を握っており、商品カテゴリーごとに地域最大の品揃えを確保し専門性を高めることで彼らからシェアを奪う「ラインロビング戦略」が機能していた。百貨店・中小零細商店が扱っている商品は、価格に対する品質がアンバランス(価格が過剰に高いか、品質が過剰に悪い)であったため、そのバランスさえ取れればPBとして成立していた。

 しかし今日では、

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