韓国食材、ブームから「食卓の定番」に!韓国食品メーカー4社が語るマーケティング戦略とは
棚割り、新商品、販促。韓国と日本の商習慣の違い
―― 日本と韓国の商習慣の違いについてお聞かせください。
鄭:かなり違いますね。日本の流通業は保守的で、一度定着したブランドは長く続くのですが、新商品が根付くことが少ない。たとえばラーメンカテゴリーは年間で約500アイテムの新商品が発売されますが、それらは新商品コーナーの中で入れ替えられていくだけで定番棚に入る商品はほんの一部。一方、韓国の場合は売り込みたい商品をメーカーが情報発信し、流通業と協働でブームを作っていくことが一般的です。
金:これは日本でいう、卸業や問屋、商社が韓国にほとんど存在しないことに起因していると思います。韓国ではメーカーと流通業の直接取引が主流で、主要なメーカーがそのカテゴリーの定番棚を作っていくようなイメージです。また物流についてもメーカーが直接行っていることが多いです。
―― 日本では卸を通じてのカテゴリーマネジメントが主流ですが、韓国食品についても卸を通しての取引が主流ですか?
鄭:主要な流通業については卸を通じて取引していますね。そのため韓国と比べメーカー発信で売場を作ることが難しく、また売場を実現し、結果を出すまでに時間がかかると感じています。また棚割りについても、日本の場合は春夏、秋冬の年2回が主流ですが、韓国の場合、年間を通じていつでも提案できるといった違いもありますね。
金:韓国ではメーカーがマネキンの組織を持っているので、新商品を出すと翌週には店頭での試食プロモーションを仕掛けて検証する。こうしたPDCAサイクルのスピード感が韓国は非常に速いのです。
朴:韓国と比べ日本は国土が広くさらに店舗数も非常に多いので、卸という機能が必要であったと考えています。地域性もあると思いますが、日本は何か物を動かす際に必ず間に人が入るので時間がかかる。こういった商習慣の違いもあり、すぐに結果を求める本部からは「なぜこんなに時間がかかるのか?」と聞かれることもあります。
鄭:ただ、最近は韓国食品の売場を広げる動きが出てきていてバイヤーの受け入れのスピードも上がってきた気がします。
尹:先日、公社で韓国食品の新商品展示商談会を行った際、問屋を挟まずに直接いらしたバイヤーが非常に多かった。
韓国はECが日本よりも進んでおり、消費者が産地と直接取引することもある。韓国人はトレンドに非常に敏感ですからそこから爆発的なヒット商品が生まれることもある。実際にマッコリやえごま油といった商品は日本でもヒットしました。
流通業のバイヤーも競合との差別化を図るため常に新しいものを求めています。そういった意味でも、我々はトレンド感のある新しいものを日本の皆様にどんどん紹介していきたいと考えています。
食のシーン提案で日本の食卓に根付かせる
―― 次のトレンドとなりそうな食品はありますか?
尹:加工食品では「薬果(ヤックヮ)」という小麦粉に蜂蜜やシナモンを混ぜ合わせた生地を揚げて作る菓子が若年層の間でブームになっています。元々は家庭で作る素朴なお菓子でしたが、昨今のレトロブームもあり、人気を集めているようです。
朴:マッコリをサイダーで割って飲む「マクサ」も、アルコールが苦手な人に人気ですね。また「チャミスル」などの焼酎を韓国ビールで割って飲む「ソメク」という飲み方がドラマ等を通じ、日本でも広まってきています。特に割って飲むという、一種の遊び的な要素が若年層を中心に共感を得ているようです。
―― 最後に、日本の流通業に向けてメッセージをお願いします。
朴:日本で商品をプロモーションする際、その商品のカテゴリーやターゲットが明確であることが求められます。韓国での「チャミスル」は年代問わず幅広い層に支持されていますが、その紹介の仕方では日本で通用しない。そのため現在は若年層をターゲットにプロモーションを行っており、今期は「チャミ会」というキャッチフレーズで食と絡めたシーン提案をドラマ仕立てで展開していきます。韓国食品とのクロスMDにも広げていきたいですね。
また「チャミスル」は冷やして飲むことが一般的で、一部コンビニエンスストアでは冷蔵ケース内で「チャミスル」を陳列し好評をいただいています。これをスーパーマーケットの店頭でも展開していきたいと考えています。
鄭:韓国食品といえば「赤い」「辛い」、その代表が「辛ラーメン」といったように、当社は長い時間をかけて韓国食を広め日本市場を開拓してきたという自負があります。
当社を含め多くの韓国食品メーカーが頑張ったおかげで、昨今は日本の消費者も韓国の味を受け入れ、市場にも広がりが見えてきました。
今期は新商品として「辛ラーメン焼きそば チーズ カップ」を出しますが、これは日本先行での発売です。当社はこれからも韓国らしい魅力ある商品を消費者にお届けしたいと考えています。
金:今回集まったメーカーは韓国国内では大企業ですが、日本のマーケット内ではまだ小さな存在です。先ほどもお話しましたが今後売上を拡大するためには韓国メーカーが力を合わせ、韓国食品をブランディングすることが重要だと思っています。
我々が目指すゴールは売場での定番化ではなく、日本の食卓での定番化です。麻婆豆腐をはじめとした中華料理が日本の食卓の定番メニューになったように、週に一度は韓国料理を食べる、そんな習慣が作れたら嬉しい。それこそが韓国の食文化が根付くことだと考えています。
尹:今年に入り多くの流通企業から「韓国フェアをやりたい」というお声がけを頂くようになりました。新商品をはじめ魅力ある商品群と共に、売場を盛り上げる販促物などの用意も検討しますので、ぜひ気軽にご相談いただければと思います。