ABEJA
入店率・買上率・客動線を可視化
顧客満足度と売上の向上へ

2017/03/10 10:06
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ABEJA(東京都/岡田陽介社長:以下、アベジャ)は、AI(人工知能)のブレイクスルー技術であるディープラーニング(深層学習)をベースにした画像解析技術で、顧客の属性推定や、行動解析を行うサービスを提供する。これまで得られなかったデータを定量的に可視化し、商品陳列、客動線、接客の改善につながるヒントを提供する。

画像解析技術を活用し、顧客の属性や行動を解析

アベジャの岡田陽介社長

 アベジャの創業者である岡田社長がディープラーニングに関心を持ち始めたのは2011年頃。場所は米シリコンバレーだ。「シリコンバレーでは、AIとくにディープラーニングの技術が急速に進み始めていた。それをどう応用し、ビジネスに結びつけるかに関心が高まっていた」。岡田社長は日本に帰り、12年9月にアベジャを設立した。

 

 会社設立後、ディープラーニングの研究開発に取り組み、約1年半後に「ABEJA PLATFORM(アベジャ・プラットフォーム)」が完成した。15年には、三越伊勢丹ホールディングス(東京都/大西洋社長)が、「ABEJA PLATFORM」の小売・流通向けサービス「ABEJA PLATFORM for Retail」を採用した。

 

 「ABEJA PLATFORM for Retail」とは、ディープラーニングというAIによる画像解析技術を活用し、顧客の属性推定や、行動解析を行い、定量的なデータを可視化するサービスである。

 

定量的な解析結果を可視化し、施策につなげる「ABEJA PLATFORM for Retail」

 

 このサービスの利用にあたっては、分析を行う基礎データを収集するために、複数台のカメラをはじめとするセンサーを店舗内に設置する。設置したさまざまなセンサーやCRM(顧客関係管理)やPOSなどの既存システムから得られるデータを統合し複合的に解析し、その解析結果をダッシュボードにわかりやすく可視化する。

 

 「ディープラーニングをはじめとするAIをビジネスに活用することを最初から考えて設計したプラットフォーム」(岡田社長)で、クラウド型サービスであるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供している。「ABEJA PLATFORM for Retail」は、17年1月末時点で全国300店舗以上に導入されている。

 

買上率に着目し店舗の課題を把握

 「ABEJA PLATFORM for Retail」で、各種センサーから収集されたデータは、まさに定量的なリアルのデータだ。経験や肌感覚から導き出された仮説は、ある意味で定性的であり、科学的な根拠を持たない。小売業は、店舗の売上向上や顧客満足度の向上のために、店舗スタッフの勘や経験だけではなく定量的なデータに基づいた施策を講じる必要がある。

 

 小売業にとって、これまでほぼ唯一の店舗内から得られるデータはPOSデータである。それに関連するデータとして、日時や天候、気温のほか、会員カードによって得られる購買履歴などがある。しかし、「何人が来店して、そのうちの何人が買ったか」といったいわゆる買上率(来店客数に対する購入客数の割合)を、データとして把握しているケースはほとんどない。肌感覚でしか捉えられていないのである。

 

 「ABEJA PLATFORM for Retail」を導入した例では、買上率の分析に活用されることが多い。たとえば、衣料品専門店チェーンの大型店舗ではスペースの効率化を課題としていた。どこに何を陳列すればより多く買ってもらえるのか、あるいは買上率を向上させるために売場の配置や接客に改善の余地はあるか、といったことだ。

 

店内に設置したセンサー(カメラ)で来店者の性別や年齢層を把握

 店舗に設置されたセンサーカメラで、来店客の人数や性別、およその年齢などは把握できる。買上率が低い場合には、買いたい商品がすぐに見つからない売場になっている、あるいは店舗の来客の属性に合った売場づくりができていない、スタッフのシフトが来客数に適していない、もしくは店舗スタッフが来店客に気づいていないといった原因が考えられる。

 

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