若年層の買物行動を変える? 急拡大するTikTokのマーケットプレイス
アマゾン出品業者が進出、若年層向け多角化の一環
世界最大のECサイトであるアマゾン(Amazon.com)のデータ調査部門であるジャングルスカウト(Jungle Scout)の調べによると、アマゾンに出品する業者やブランドのおよそ20%が2024年内のTikTok Shopへの進出を検討しているという。アマゾンへの過度な依存度を下げ、出品先の多角化を図りたいという意図が読み取れる。ジャングルスカウトによれば、2023年1~3月期に、求める商品の検索をTikTokから開始した米国人消費者は前年同期比44%増で全体の2割に上る。若年層に至っては4割にもなる。
TikTokで13万8000人のフォロワーを持つインフルエンサーである25歳のキアラ・スプリングスさんは米ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)紙のインタビューに対し、「オンラインでの買物の際に、商品検索をグーグル(Google)でしようなどと考えたことはない。直にTikTokで探す」と回答しているが、若年層のオンラインショッピングにおけるTikTokの重要性は増している。
ちなみに、アマゾンで商品検索を始める消費者の割合は全体の56%と圧倒的だが、TikTokはEC専門サイトではないにもかかわらず商品検索で健闘しており、その潜在的な可能性は大きい。
米IT情報サイトのテッククランチ(TechCrunch)はこうした状況を評して、「TikTokは米若年層のオンライン上の購買行動を変える可能性がある」と論じている。
TikTokは元来ユーザーにソーシャルメディアとして認知されており、そもそものアイデンティティがECであるアマゾンや、新興の中国系ECであるテム(Temu)などのライバルに対して不利は否めない。しかし、毎日のオンライン閲覧における滞在時間の長さや高頻度からして、マーチャントには潜在的な価値が無視できない存在なのだ。
事実、先述のニューヨーク・タイムズ紙の記事では、TikTok Shopへの出品業者が「TikTok禁止法」の悪影響を懸念していることが示されている。売上高比率の高い美容と健康に関連する商品を扱う業者やブランドは、なおさらだ。
たとえば、若年層向け化粧品を販売するブランドのユースフォリア(Youthforia)は、TikTok上で20万人近いフォロワーを持つが、マーケティングの一部をインスタグラムなど他のソーシャルメディアへ移すことも考慮中だ。
米EC業界にとっては政治に関係なく、TikTokで1億人を超える米国人ユーザーに安定して消費を行ってもらうことが願いであり、最終的に米国におけるTikTokの立場がどのようなものになるか、経済面からも目が離せない。