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アパレル小売市場 コロナ危機で主要アパレルの在庫⽉数が最⼤2.5倍に増加

アパレル
istock.com/Chaay_Tee

小売業の在庫問題を解決するクラウドサービスを提供するフルカイテンは、主要アパレル企業のコロナ禍における在庫月数と在庫回転率に関する分析レポートを発表した。
対象とした大⼿上場アパレル企業の2020年3〜 5⽉期の決算では新型コロナの感染拡⼤による消費マインドの冷え込みで、各社とも売上が⼤きく落ち込み厳しい状況が続いている。

今回のレポートでは新型コロナの影響による需要の消失が経営に与えたインパクトを在庫 (棚卸資産)量の視点から定量的かつ客観的に計測するため、在庫⽉数と在庫回転率を分析している。

調査対象は2⽉期または 8⽉期決算で売上上位12社の2020年3〜5⽉の決算データ。その期間は新型コロナの影響で⾮常事態宣⾔が出ていた時期と重なる。

アパレル大手12社の在庫指標 [2020年3~5月期]

分析の結果は図表にある通り、2020年3~5⽉の売上規模を基準に、5⽉末時点で「何カ⽉かけて売り切れる量の在庫を持っているか」を⽰す在庫⽉数は、12 社中11社が前年同期と⽐べ増加した。増加率は23%〜150%となり、最⼤で2.5倍となったケースもあった。新型コロナの影響は収束が⾒通せないことから、依然として売上に対して在庫が過⼤な状態が続いている。

在庫⽉数が唯一減少し回転率が向上した⻄松屋チェーンは、⽣活必需品も扱っていたため緊急事態宣⾔下も⼤半の店舗が営業を継続していたことが寄与した。

⼀⽅で、売上⾼が⼤きく減少しているのと⽐べ、5⽉末の在庫の増え⽅は緩やかなことから、各社とも仕⼊れを絞り込んだことが窺える。ただ、2020年春夏ものは新型コロナの影響が⽇本で拡⼤する前に⼤半の発注を終えていたことから、販売が不振に終わって2020年秋冬ものの仕⼊れ予算を絞らざるを得なくなり、発注を抑制したものとみられる。

実際に⾐料品の輸⼊額は前年と比べて⼤きく減少した。国内で流通する⾐料品の約 97%は輸⼊品であることから、輸⼊の減少はアパレルの仕⼊れ額の減少を表している。

財務省の貿易統計によると、2020年6⽉の「⾐料品・同付属品」の輸⼊額(速報値)は 1622億円で、前年同⽉⽐17.1%減少した。5月 (確定値)は1462億円で前年同⽉⽐
32.5%の減少だった。

2⽉は縫製のほか⽣地、副資材の供給も担う中国で⼯場の稼働がストップしたことが響いた。それに対し、5⽉と6⽉の⼤幅な減少は、⽇本のアパレルが秋冬ものの調達を⼤きく 絞ったことが影響しているとみられる。

今後、2020年秋冬ものの仕入れを抑制したとはいえ、春夏ものの在庫は滞留している。来年春夏へキャリー(持ち越し)しても、来年に売り切ることができるかどうかは不透明であり、今期に棚卸資産評価損の計上は不可避とみられる。また、値引きもいとわずに期中に消化を図れば、採算が悪化する。

さらに、小売業においては⼀般的に、在庫を減らすと売上も減少する。ヒット商品が 出る確率を上げるために商品種類を増やし、⽋品を避けるために在庫を余分に持って従来 の事業モデルのままで、仕⼊れを抑えて今秋冬商戦を迎えれば、売上がますます低迷する のは必⾄だ。

国内アパレル⼩売市場は、2030年に向けて急速な⼈⼝減少に伴う需要縮⼩が待ち構えている。従来の在庫過多を前提とした売上第⼀のビジネスモデルの⾒直しが迫られている。