食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター(HC)といった業態の小売企業はコロナ特需で2月以降売上高を伸ばしているところが多い。なかでも、HCの伸びが著しい。なぜHCは売上を伸ばすことができたのか。カテゴリー別売上高からその要因を探る。
日米で伸長する
HCの業績
日本のHC業態について、ポストコロナ期に向けた期待値が高まってきている。4月の政府による緊急事態宣言発令に先立って、東京都は休業を要請する商業施設の候補にHCも挙げていたが、最終的には食品スーパーやドラッグストアと同様に、生活必需品を販売する業態であり休業要請はしないとの判断を下した。米国でも同様の認識でHCは営業継続が認められ、実際に最大手The Home Depotの2~4月期の既存店売上⾼は前年比6.4%増、Lowe’sは同11.2%増と生活必需品を中心に売上を伸ばし、期待通りに危機下の消費者ニーズに応えた形となっている。
国内のHCも2月から3月にかけて、マスクやトイレットペーパー等の家庭用品・日用品の売上が大きく伸びた。消費税率引き上げ以降、前年比ベースで4カ月連続のマイナスが続くなかで、コロナ禍の特需が業績を押し上げた形であるが、緊急時の生活必需品のニーズに対応したという意味合いも大きい。
4月以降は
DIY、園芸が好調
その後、それらの商品のニーズは徐々に平常の状態に戻り、日用品の売上増は緩やかなものとなった。しかし、4月以降もHCは好調を維持している。
この局面では、テレワークの拡大や外出自粛による巣ごもり消費の拡大で、HC業態の主力であり、在宅での娯楽という性格を有するDIY関連や園芸用品、ペット用品の売上が拡大したのである。これは、従来はDIYや園芸を積極的に行っていなかった人、あるいはペットを飼っていなかった人を新たに顧客として取り込んだことが効いたと考えられる。5月に入っても、業態全体のデータは現時点で未発表であるものの、主要企業の売上状況を見ると、従業員の確保に苦戦した一部の企業を除くと、大半が好調を維持している。
HCは、危機時の実績からは、生活必需品を扱うエッセンシャル業態としてのポジションが明確になり、その後の外出が抑制される局面では、日常生活に快適さや娯楽を提供する商材を扱う業態としての実力も示している。その中核となるDIYや園芸の分野では、顧客は単に商品の購入だけでなくノウハウやスキルを求める傾向が強い。それを実店舗というリアルな場での実演によって提供できるという特性は、コロナ危機を経て一段と存在感を増したECとの対抗上、大きな意味を持ってくる。コロナの影響で生活パターンが変容し、消費活動の重心が在宅にシフトすることが予想されるなか、新たに獲得したDIYや園芸を楽しむ顧客を、今後も維持・拡大させることでHCは、さらなる成長を遂げる可能性を有していると言えるだろう。