[東京 15日 ロイター] – 三菱UFJフィナンシャル・グループなど大手銀行グループが15日発表した2019年3月期決算は、市場部門の収益で明暗が分かれた。三菱UFJが大幅減益、みずほフィナンシャルグループが赤字に沈む一方、三井住友フィナンシャルグループは増益を確保した。20年3月期も市場環境は厳しく、運用の巧拙がグループ全体の収益を左右する事態も想定されそうだ。
<頭1つ抜き出た三井住友>
19年3月期の各銀行グループの市場部門の業務純益(三菱UFJは営業純益)は、三井住友が前年同期比2.1%増の2985億円となる一方、三菱UFJは同26.0%減の2512億円、みずほは136億円の損失(前年同期は1857億円の利益)となった。
市場部門の業務範囲が各グループで異なるため、一概に横並びの比較はできないものの、三井住友が競争を制した格好だ。
<みずほは含み損を処理、三菱UFJは米債買い増し>
みずほが損失に沈んだのは、膨らんだ外債の含み損を一挙に処理したためだ。このため、市場部門を中心に1947億円の損失を計上した。坂井辰史社長は「有価証券ポートフォーリオは再構築した」と強調した。
三菱UFJは米国債を中心とする外債のポートフォーリオを大幅に縮小。新たに取り組んだ機関投資家向けのセールス&トレーディング業務の不振も重なり、減益に落ち込んだ。中計では設けた市場部門の19年3月期の営業純益目標は3400億円だったが、大幅な未達となった。収益の柱だった米債のポートをピーク時の24兆円からいったん17兆円まで削減させたことが響いた。
<問われる20年3月期>
世界的な低金利環境の持続で、市場部門を取り巻く環境は厳しい。みずほは「これまでストレッチをかけた運営をしてきたが、今期は保守的に見込んでいる」(坂井社長)としており、市場部門の「安全運転」を心がける。
一方、三菱UFJは19年3月末の段階で米債のポートフォーリオを21兆円まで買い増した。苦戦している機関投資家向けのセールス&トレード業務にも手を打ち始めた。三毛兼承社長は「市場部門は昨年度は苦戦したが、今年度のポートは作った。セールス&トレードの体制は、不採算部分を見直して最適化する」と語り、中計で掲げている20年3月期の目標3600億円を維持するとした。
太田純・三井住友FG社長は、前年度の市場部門の運営について「なんとか計画をやりきった。上期の貯金を使い、下期の苦しい市場環境を乗り切った」と説明。今期については「株式と債券のポートを臨機応変にリバランスするオペレーションになる」とした。今年度の目標も昨年度並みを維持するという。
(布施太郎 編集:田巻一彦)