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ネットスーパーの利用率は約16%、普及には独自のチャネル価値が必要=データで見る流通

 日本では核家族化の進行やライフスタイルの多様化、可処分所得の変化などに伴い、共働き世帯が増加している。労働政策研究・研修機構が発表している数値によると、2016年の共働き世帯は1129万、専業主婦世帯は664万で、共働き世帯が専業主婦世帯の約2倍となっている。共働き世帯は日々の買物に十分な時間を割けないため、ネット通販(EC)サイトやネットスーパーの利用が進んでいると想定される。

 そこで、17年7月に20~69歳の男女1万人※1を対象とした通販※2の利用実態調査を行った。その結果、通販利用率は90%、通販利用者における利用チャネルの1位は「ECサイト」87%、2位は「ネットスーパー」16%、3位は「カタログ通販」12%となった。

 そのなかで、「月に1回以上」通販で買物をする1000名の購買行動を深掘りし、ネットスーパーの利用頻度を確認したところ、週に1回以上ネットスーパーを利用する専業主婦・夫は17.5%に対して、既婚会社員(公務員含む)は31%だった。また月1回以上の利用では、専業主婦・夫が65%に対して既婚会社員は92.9%となっており、会社員のほうがネットスーパーの利用に積極的なことがうかがえる。

 また、利用チャネルごとの利用金額を確認すると、最も高いのは「ネットスーパー」で月平均1万1560円となった。次いで「ECサイト」が月平均1万589円である。

 さらに、「店舗・店頭ではなく、通販で買物をした理由」をチャネルごとに見ていくと、全体的に「品揃えが豊富」「価格が安い」「いつでも買える」といった共通の理由がランクインしている。

 ネットスーパーの利用理由は1位「いつでも買える」、2位「大きな荷物や重たい荷物を運んでくれる」であり、忙しい会社員が生活必需品を気がついた時にまとめ買いしている様子がうかがえる。また年代が上がるごとに「重たい荷物を運んでくれる」という理由でネットスーパーを利用する人が増えるため、加齢とともに体力や脚力の問題で買物や移動の手間を省きたいニーズが顕在化した可能性がある。

 ただ、ECサイトの利用理由1位が「品揃えが豊富」であることや、ウェブチャネル以外の通販メディアは「通販でしか買えない商品がある」という独自価値がある。一方で、ネットスーパーの「いつでも買える」「大きな荷物や重たい荷物を運んでくれる」という利用理由はウェブを通じた購買であれば他チャネルでも基本的には同じ価値提供ができてしまうため、ネットスーパー独自のチャネル価値を構築する必要があるように思う。

 たとえば、イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)のネットスーパーであれば配送時間帯を10便以上細かく指定することができるし、魚をおろす等の簡単な調理をしたうえで商品を受け取ることもできる。こうしたきめ細かいサービスを充実させることが重要だろう。

 このような取り組みが増えてくると、ウェブ購買に慣れている若年層のニーズを取り込んでいけるのではないだろうか。

 

※1 平成27年国勢調査による、全国5エリア×性別×年代の人口動態割付
※2 本調査での「通販」は「テレビ・ラジオ通販」「カタログ通販」「新聞広告・折り込みチラシの通販」「ネットスーパー」「ECサイト」を指す

 

(「ダイヤモンド・チェーンストア」2017年9/15号)