データで見る流通
「買物体験」を重視する消費者、実店舗の存在価値は不変
文=栗栖 郁
CBREリサーチ
不動産サービス大手のCBREは、消費者が実店舗に求めているものは何なのかを探るため、昨年「アジア太平洋地域における消費者調査 2014・日本」を実施した。
調査によると、実店舗で買物をする際に(生鮮食品を除いた服飾・靴・アクセサリー・スキンケア・電化製品など)、約半数の消費者がそこで得られる「体験」を重視していると回答した。すなわち消費者は、「満足度」の高い買物体験が得られることから、実店舗を訪れていると言える。
「満足度」を測る指標として、実店舗に関する25項目のうち、何を重要視しているかを訊いたところ、「商品の価格」「利便性の高さ」、そして「清潔感がある」の3項目をとくに重要視しているという回答を得た(図表1)。
実店舗だけでなく、オンライン・ショッピングも、今や消費者の暮らしに欠かせないものとなりつつある。消費者は、オンライン・ショッピングと実店舗をどのように使い分けているのだろうか。「ウインドーショッピング」「特定の商品を探す」「価格や商品詳細をチェックする」、そして「商品を購入する」という4項目について訊いた。
「ウインドーショッピング」では、「オンライン・ショッピング(パソコン)」が7割超、「実店舗を訪れる」が7割弱。「特定の商品を探す」では、「オンライン・ショッピング(パソコン)」が約9割だったのに対して「実店舗を訪れる」は約6割。「価格や商品詳細をチェックする」も同様の結果だった。「商品を購入する」では、「オンライン・ショッピング(パソコン)」が約9割で、「実店舗を訪れる」も8割を超えた。
4項目について、最も頻度が高い買物方法についても訊いた(図表2)。「特定の商品を探す」「価格や商品詳細をチェックする」で頻度が最も高かったのは「オンライン(パソコン)」で、8割近くに達した。これに対して、「商品を購入する」で最も頻度が高かったのが「実店舗を訪れる」で、過半数を超えた。この結果から、多くの消費者が実店舗での買物体験を楽しんでいることや、実際に商品を手にとってから購入を決めていることがうかがえる。
調査全体から言えることは、実店舗を訪れることで得られる「買物体験」を重視する傾向が消費者に見られることだ。実店舗は、オンライン・ショッピングでは得られない体験を提供することで、いわゆる「コト消費」のニーズに応えることができる。実店舗ならではの体験を提供し、消費者の心をつかむことができれば、実店舗の存在価値が高まっていくだろう。
(「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年4/15号)