小売業に影響する2019年以降の税制改革(4)
酒税による収入確保のための改正酒税法
現在の酒税による税収は、国の税収入全体の約2%である。しかし、100年ほど前(当時、酒造税)は約40%を占めており、1930年頃までは、税収のうちの第1位だった。その後、酒税による税収入は年々減少し、この10年間だけでも約1%減っている。
改正酒税法の目的は、落ち込んでいる酒税による収入を増やすことにある。そのために、公正な競争、ビールの多様化、酒税の段階的統一を図ることを意図としている。2017年の、酒類の過度な安売りを規制する改正酒税法はその第一弾であり、2018年4月のビールの定義改正が、第二弾となる。これにより、様々なフレーバーを持つビールの開発などが進むようになり、消費者のビールの選択肢の幅が広がり、ビールの消費量も広がることが期待されている。
そして、2020年、2023年、2026年(いずれも10月)の3回に分けて施行される改正酒税法により、酒税の税率が一本化することになっている。最も消費市場に影響すると思われるのがビール系飲料だ。これまで税率が低い分市場が伸びてきた発泡酒や第3のビールは増税となり、逆に伸び悩んでいたビールは減税となる。
ビールの税額は350mlで22円安に
日本酒、ワイン、酎ハイも一本化
ビール系飲料の税率の変化を具体的にみると、ビールの350mlあたりの税額は現行の77円が2026年に55円になる。また発泡酒(麦芽比率25%未満)は、47円が55円に、第3のビールは28円が55円になる。
ビ-ル以外の酒類も、税率が改正される。日本酒は減税となり、ワイン、酎ハイは増税となり、その影響が出ることが予想されている。
現在、350mlあたりの税額が日本酒で42円、ワインで28円であるのを、2020年と2023年の2段階で35円に一本化する。また、28円のチューハイやハイボールも、26年10月に日本酒やワインと同じ35円に増税になる。
主な酒類の350mlあたりの税額の変化
種類 | 現在 | 2020年 | 2023年 | 2026年 | |
---|---|---|---|---|---|
ビール | 77円 | 70円 | 64円 | 55円 | |
発泡酒 | 麦芽比率25~50% | 62円 | 59円 | 55円 | |
麦芽比率25%未満 | 47円 | 47円 | 47円 | ||
第3のビール | 28円 | 39円 | 47円 | ||
日本酒 | 42円 | → | 35円 | ||
ワイン・酎ハイ・ハイボール | 28円 | → |
※施行月はいずれも10月
※金額は概算
予想が難しい酒類の購買動向
酒類の過度な安売りが規制されたことで、値引き販売をしてこなかったコンビニにとっては、ディスカウントストアや食品スーパーなどとの価格差が縮まれば、販売チャンスが広がる。一方で、帝国データバンクによると、競争が激化したことで、2017年度の酒類販売業者の倒産件数は前年度比23.1%増の176件で、4年ぶりに増加しているという。このように酒類の販売チャネルの競争は激しさを増している。
酒税が一本化することで、価格が値上がりする酒類と、値下がりが期待されるお酒が出てくる。価格に敏感な消費者がそれにより購買行動を変えてくるかもしれない。さらに酒類は嗜好品のため、消費者の動きを見極めるのは難しい。酒類販売には、消費者動向を感知する高度なアンテナが求められている。