ロイター企業調査:米中摩擦の影響「ある」5割超に増加、昨秋3割
[東京 22日 ロイター] – 3月ロイター企業調査によると、米中貿易摩擦の影響を受けている企業は5割超と、昨秋の3割から増加した。影響は受注・生産・設備投資など企業活動全般に広がりを見せている。足元の貿易摩擦は19年中にも解決するとの見方が増えたが、覇権争いの長期化を予想する企業も多い。中国経済の減速は20年以降も続くとの見方が6割近くを占める一方、中国の拠点を移管する動きはほとんど見られていない。
今回の調査期間は、3月4日─15日。調査票発送企業は479社、回答社数は240社程度。
米中摩擦の影響を受けている企業は、昨年10月調査では33%だったが、今回は52%に増加。うち9%は大いに影響を受けていると回答した。
「関税引き上げで米国子会社のコストが増加」(輸送用機器)との指摘があるほか、「液晶半導体向け厚板・IT関連財の販売が低迷している」(非鉄金属)、「中国向け輸出の貨物数量に影響がある」(運輸)など、米中に加え国内事業にも影響が出ている。
また、「製造業の投資意欲減退により、半導体製造装置や生産用機器向けの需要が減退」(ゴム)、「中国に製造拠点のある日系企業の業績不安による設備投資抑制」(建設)など、受注・生産の減少が設備投資にも波及している。
米中摩擦はいつまで続くのか──。企業の間では早期に解決するとの見方が増えている。昨年11月の調査では20年以降も継続するとの回答が51%を占めたが、今回は45%に減少。摩擦継続は19年後半までには終息、との回答が全体の56%を占めた。
「米中ともに自国経済への悪化が顕著となってきている」(化学)ため、双方とも長引かせることはしないとの見方に傾いていることがうかがえる。「関税に関する貿易戦争は長引くと中国側が回避策を講じてくるだろう。妥協点を見つけて終息する」(紙パルプ)といった観測が出てきている。
ただ「貿易収支のインバランス解消という狭義の意味では決着に向かうと思われるが、覇権を争うという本質的な意味での米中摩擦であれば、短くても15年程度は続く」(電機)、「本丸は次世代通信を含めた技術的な覇権争いであり、当分継続」(建設)など、両者の軋轢は貿易問題にとどまらず、長期化するとの見方は多い。
中国政府は足元の景気減速についてすでに経済対策を講じているものの、日本企業の間では中国経済の停滞が長期化するとの見方は多い。
減速は20年以降も継続するとの見方が58%と最も多かった。今年後半以降は減速局面から脱するとの見方は4割にとどまった。
それでも中国に事業拠点を展開している日本企業にとって、巨大マーケットとしての位置づけは変わらない。拠点を「中国以外に移管する検討はしていない」との回答が93%を占め、昨年10月調査の87%から増えた。
(中川泉 編集:石田仁志)