10月から入国規制が大幅緩和! 小売業を潤した「インバウンド消費」は復活するのか
円安もインバウンド増のはずみに?
インバウンド消費に弾みをつけているのが、国内では不安要素となっている歴史的な円安である。
訪日外国人観光客側からは「円安効果」とみなされ、百貨店では高級ブランドや高額品の購入による免税売上高も跳ね上がっている。
たとえば「松屋銀座」では、平日の免税売上高が約10倍、日曜には20倍に急増。また、「三越銀座店」では16日までの1週間の免税売上高が約10倍伸び、そごう・西武(東京都)でも規制緩和直後の11日から17日にかけて国内10店舗の外国人客数が前年同時期の5倍増となったという。
百貨店各社は自動翻訳機や免税カウンターの拡張、割引クーポンを導入するなど、インバウンド消費を後押しする施策を展開しており、そうした取り組みが奏功したとも言える。現時点におけるインバウンド消費は百貨店を中心に動いており、家電量販店やドラッグストアまでその効果が波及するかは今後の動きを注視していく必要がある。
実際に、ファーストリテイリング(山口県)グループの「GU」では、10月21日より外国人がパスポートを提示すると一部商品の価格を500円~1000円割り引くことを発表するなど、百貨店のみならずそのほかの小売業もインバウンド消費を後押しするべく動き出している。
世界的に評価される日本、インバウンド消費は戻るか
政府は2030年に6000万人の誘客を実現し、「観光立国」をめざす方針だ。全国100カ所の主要観光地については、案内や標識の多言語表示の充実と改善、外国人観光案内書などの多言語解説の整備、無料Wi-Fiの整備による快適な旅行環境の整備を進めている。今回の規制緩和に伴う訪日外国人観光客の増加が継続し、国内消費が活性化していくことが、現在ネガティブに捉えられている円安に歯止めをかける一つの契機となる可能性がある。
今年5月に開催された世界経済フォーラム(WEF)で発表された「2021年旅行・観光開発指数レポート」において、日本は2007年の調査開始以来、初めて1位を獲得している。公共交通を含む交通インフラの利便性や正確性、犯罪率の低さなど安全面からの評価以外にも「旅行と観光関連の持続可能性」「社会経済の回復力と条件」「インフラ(社会基盤)」「旅行・観光関連の需要喚起」などが評価されている。
コロナ以前の5兆円規模に戻るまでは一定の時間が要すると考えられるが、小売業におけるインバウンド向けMDの進化や、情報発信などを通じた需要の喚起など、本格的なインバウンド回復に向けた具体的な施策が求められている。