ハラル食品の可能性は無限大!? 小売企業に求められる「ムスリムフレンドリー」な対応

阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

「ムスリムフレンドリー対応」が小売市場を広げる!

 イスラム教徒が買物しやすい環境を整えるために、佐久間氏が挙げるのが「ムスリムフレンドリー」という概念だ。ムスリムフレンドリーとは、ハラル認証の有無に関係なく、イスラム教徒が安心して利用できるよう一定の基準をクリアしていることを指す。

 たとえば、食品スーパーでは、売場にハラル専用コーナーを設けるのではなく、一般の棚にムスリムフレンドリー対応を行った商品を配置することで、イスラム教徒が安心して商品を選ぶことができる。

シンガポールで販売されているムスリムフレンドリーのタバスコ

 佐久間氏は「ハラル食品における『シンガポールモデル』が、日本でも参考になるはずだ」と述べる。多民族国家であるシンガポールでは、ハラル食品を「イスラム教徒専用食品」としてではなく、「誰でも食べられる食品」として市場に展開している。「ハラル食品を『誰でも食べられる共用品』として捉え、この考え方を日本の食品スーパーに取り入れることができれば、国内に住むイスラム教徒の買物の利便性を高められる」と佐久間氏は語る。

 シンガポールモデルのような考えが食品スーパーに浸透していけば、既存の商品あるいは売場でもイスラム教徒が安心して買物ができるようになる。今後も国内のイスラム教徒が増えていくこと、ハラル認証取得の難易度の高さを考えると、ムスリムフレンドリー対応を検討していく必要がありそうだ。

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記事執筆者

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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