ハラル食品の可能性は無限大!? 小売企業に求められる「ムスリムフレンドリー」な対応

阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

「ハラル食品=イスラム教徒向け」という誤解

ハラル・ジャパン協会代表理事の佐久間朋宏氏

 さらに、流通や小売の現場では、ハラル食品の取り扱いが十分に進んでいるとは言えないのが現状だ。この理由について、佐久間氏は「ハラル食品は非イスラム教徒でも問題なく食べられるにもかかわらず、『ハラル食品はイスラム教徒向け』という誤解がある。小売業のバイヤーや店舗担当者の間でも、この誤解が解消されておらず、小売業界においてハラル食品の取り扱いが進んでいないのではないか」と指摘する。

 流通の問題も大きなハードルとなっている。たとえば、ハラル食品を輸出する際には専用のパッケージが必要になるが、国内市場の流通では異なる仕様のパッケージを求められることが多い。この違いがコスト増の要因となり、企業がハラル食品市場に参入しづらい状況を生んでいる。

 こうした課題があるものの、ハラル食品の普及に向けた取り組みも進んでいる。

 たとえば、観光庁の実証実験では、ホテルやレストラン、お土産店などが独自にハラル対応ポリシーを導入し、それに基づいてハラル対応メニューを提供するなど、ハラル対応の方針を明示している。そのほか、大手コンビニエンスストアのローソン(東京都/竹増貞信社長)では、商圏にイスラム教徒が多い「ローソン相武台前南口店」(神奈川県座間市)でハラル食品のスパイスやスナックを販売している。

 とはいえ、全国規模の小売業では、まだ本格的な動きは見られない。「小売大手が本格的に取り組めば、全国の消費者にハラル食品が届くようになる」と佐久間氏は期待を寄せる。

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記事執筆者

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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