「奪われる」側から「奪う側」になる
経営者による25年の見通し
今年1年の見通しをHC各社の経営者はどのようにみているのか。16社の社長に回答してもらった。分析すると、各社の課題意識として3つのキーワードが挙げられた。
1つは、生活必需品の物価上昇や消費者の防衛意識の高まりにより、価格政策が重要視されることである。HCは21年以降、客数減に歯止めがかからず苦しんできた。その対応策として、PBや頻度品など普段使いの商品を中心に各社値下げキャンペーンを実施してきた。
円安や仕入れ価格の高騰で粗利益率が低下傾向にあることから、やみくもに地域最安値をねらうのではなく、消費者に「ここは安い」とイメージしてもらえるプライシングが重要となる。
2つ目は他業態とのボーダーレスな競争激化である。以前より、日用消耗品をめぐってはドラッグストア(DgS)やディスカウントストア(DS)、雑貨やホームファッションは専門店と熾烈(しれつ)な競争を繰り広げてきた。ここにきて、食品スーパー(SM)や家電量販店との競争も激化してきている。
3つ目はPBを軸とした連携である。口火を切ったのはコーナン商事(大阪府)で、同業他社だけでなく、SM、DS、DgS企業へとPB供給先を増やしてきた。23年からは〝PB供給合戦〞にカインズ(埼玉県)も参戦。グッデイ(福岡県)や総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂(東京都)に供給を開始した。
SM、GMS、DgSなどの業態は住関連、家庭用品のカテゴリーの売上構成比率が低く、取り扱いがあるもののMD(商品政策)に困っている企業が多い。HC企業にとってシェアを拡大するチャンスとなるだろう。
「奪われる」側から「奪う」側になる
HCだけでなくほぼすべての業態で、国内小売市場は限られたパイを奪い合ってきた。これは少子高齢化が続き、胃袋は増えないし、可処分所得が増えないなか、必然の流れともいえる。これまでHCは住関連カテゴリーをドメインとしながら、周辺領域のシェアを奪ったり、奪われたりしてきた。
歴史を振り返ると、どちらかというとこれまでHCは「奪われる」ことのほうが多かった。DgSには日用品だけでなく、ペットフードや園芸カテゴリーも奪われ始めている。SPA(製造小売)型の専門店には、家庭雑貨、ホームファッション、家庭用衣料を奪われた。リフォームは、他業態に先んじて「奪う」側だったにもかかわらず、近年は家電量販店の後塵を拝するようになった。
その一方で、「奪う」側に回っているカテゴリーもある。プロユースはその典型例だ。職人の購買行動を徹底的に研究した結果、ワンストップで必要なものを揃えられるプロショップを展開し、建設業界からシェアを奪った。アウトドアや家電へのラインロビング、他業態へのPB供給も、他業態からシェアを奪取する好事例といえよう。
「奪われる」側から「奪う」側になるためには、消費者の変化に素早く対応する必要がある。AIをはじめとするテクノロジーを活用した生産性向上も避けて通れない。生き残りをかけた勝負の1年はすでに始まっているのだ。
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