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7兆円市場を奪取せよ!ホームセンター業界、リフォームへの再挑戦

リフォーム
建設費用の高止まりも相まって、今後、「新築よりもリフォーム」という流れがますます活発化していくと考えられる i-stock/SetsukoN

市場規模7兆円今後も底堅い

 ホームセンター(HC)の市場規模は2020年にコロナ特需による追い風を受け、初の4兆円を突破した。しかし、3年連続で反動減となり、23年度は再び4兆円を下回る見込みだ。成熟したHCが再成長するには新規市場の開拓が必須である。

 今、新規市場として有望なのがプロとリフォームだ。プロ市場については別冊『DIAMOND PRO DEALER』にて詳細を解説している。本特集ではもう1つの有望な新規市場であるリフォームを取り上げる。

 リフォーム市場規模は6兆~7兆円と言われている。矢野経済研究所によると住宅リフォームの市場規模は20年が約6.5兆円、21年が約6.9兆円、22年が約7.3兆円。リフォーム産業新聞社によると、20年が約5.5兆円、21年が約5.9兆円、22年が約6.2兆円と、数字に差が見られるものの、6兆~7兆円で推移していることがわかる。

 今後もリフォーム市場は底堅く推移するとみられている。その理由は大きく2つある。

 1つは1971~74年生まれのいわゆる「団塊ジュニア世代」が、リフォーム需要が高まる年代に突入したことだ。リフォームは50~70歳がメーンの顧客層で、2年前から団塊ジュニア世代は50歳に差し掛かるようになった。人口動態の側面から一定数の需要が見込めるのである。

 もう1つは、空き家の社会問題化である。日本は16年から人口減へと転じているが、「新築信仰」が根強く残ってきた。

 しかし、総務省によると23年10月時点の空き家率が過去最高の13.8%となるなど、空き家が社会問題として取り沙汰(ざた)される機会が増えるようになった。建設費用の高止まりも相まって、今後、「新築よりもリフォーム」という流れがますます活発化していくだろう。

 

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家電量販店になぜ抜かれたか

 リフォームが有望な市場である理由は、市場規模だけではない。寡占化されていないため、今からでもマーケットリーダーになれる可能性があるのも魅力の1つだ。

 HC市場は市場規模4兆円のうち、上位10社の売上合計が約3兆円で、7割近くを占めている。それに対してリフォームは7兆円の市場規模に対して、トップ企業の売上高が約1500億円。1000億円を超えている会社は3社のみで、上位寡占がまだまだ進んでいない。

 さらに、追い風となっているのは補助金である。詳細は45ページにまとめたが、「子育てエコホーム支援事業」「先進的窓リノベ2024事業」「給湯省エネ2024事業」などさまざまな補助金・減税制度が用意されている。これらが一般消費者のリフォームを後押ししており、事業者にとってはビジネスチャンスとなっている。

 では現状のHCによるリフォーム事業はどうなっているのだろうか。

 HCがリフォーム事業に参入し始めたのは10~20年前で、小売業界の中で最も早かった。DIYや補修用品を販売していることから、その延長線上で、店内にリフォームの展示品を並べたコーナーをつくり始めたのだ。

 悪徳工務店の手抜き工事や不祥事が定期的に報道されることもあり、消費者は「リフォームは信頼できる企業に任せたい」という意識が強い。地域に根差しているHCはその知名度と来店頻度を武器にリフォームのシェアを拡大してきた。

 しかし、課題も多い。HCはチェーンストア理論に基づき、セルフ販売を基本とし、売場当たりの人数を減らして効率的な店舗運営をめざしてきた。そのため、リフォームの専門知識を持った人材や、接客・営業のノウハウが不足してきた。また、工事の仲介のみを行う企業も多く、施工業者とうまく連携できないといった問題も挙げられる。

 このようにHCのこれまでの事業とはビジネスモデルが異なるため、うまく軌道に乗せられずに撤退する企業も少なくなかった。

 そこで一気にシェア拡大に動いたのが家電量販店だった。ヤマダホールディングス(群馬県/山田昇会長兼社長)、エディオン(大阪府/久保允誉社長)らは、リフォーム事業に本格参入し、住まい領域全体にサービスを拡大してきた。

 家電量販店は、高単価な家電商品を販売する接客のノウハウを生かし、人材育成に注力。人事制度も見直し、契約件数に応じたインセンティブの設計や、売場にお客を連れていくだけで報酬を与えるような仕組みを整えた。

 売場づくりでは、お薦め商品を明確化した上で、来店者から認知度が高まるような動線づくりも徹底。工事費用を含めたパッケージ価格の提案など、顧客目線の施策を矢継ぎ早に行った。

 その結果、小売企業の22年度リフォーム売上高ランキングは第1位がヤマダHD、第2位がエディオン、第3位がカインズ(埼玉県/高家正行社長)となった。気が付けばHCは家電量販店に後塵を拝することとなったのである。

巻き返しを図る大手HCたち

 ただ、HCも家電量販店の躍進を、指をくわえて見ていただけではない。

 カインズは全店舗の約8割の店舗にリフォーム売場を設置。お客がより気軽にリフォーム依頼ができるように、ウェブサイトをリニューアルし、コールセンターを強化した。そして、店舗、ウェブサイト、コールセンターの3つをシームレスにつなぐことに注力してきた。

 また、商品統括本部、販売本部、マーケティング本部が三位一体となってリフォーム強化を進め、23年度の下期は大幅な売上増を達成した。

 アークランズ(新潟県/坂本晴彦社長)はHCの中でもリフォーム事業を成長させている、最も勢いのある会社の1つだ。23年9月には旧アークランドサカモトと旧ビバホームの事業を統合し、アークホームに集約した。

 売場改革により標準化を進めると同時に、カウンターと事務所を一体化することで、お客からスタッフの仕事ぶりが見えるように変更。地域密着、営業力強化、販促の見直しも同時並行で進めている。

 コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)は23年2月に国内1200店舗以上ある全店でリフォーム対応を開始し、年間6万件以上の工事を受注。人材育成にも注力し、コメリ独自のスタッフ教育制度である「マイスター制度」の資格取得者を拡充してきた。

 24年3月期末時点でリフォームカテゴリーのマイスター制度では、従業員の86.0%が3級、75.4%が2級を取得。リフォーム専任担当者以外も接客できるようにしている。

人に投資するチャンス到来

HCのリフォームは転換期を迎えている。飛躍させるには人への投資、売場の見直しが必要だ

 このような大手HCとは異なるアプローチで、御用聞きから顧客のニーズをくみ取っているのがロイヤルホームセンター(大阪府/中山正明社長)だ。混合栓の交換や水漏れなどの困りごとに対応する「ロイサポート」は13年からサービスを本格化。

 サービスの対応はすべて同社の正社員が担当することが特徴で、現地調査から施工、アフターフォローまで一気通貫で行うことで、お客からの信頼を勝ち取っている。

 ダイヤモンド・ホームセンター誌2023年12月15日号特集「店の外で〝個〞客とつながる」で紹介しているサンデー(青森県/大南淳二社長)の「SUN急便」、フタガミ(高知県/野中正彦社長)の「フタガミ御用聞き」、アイリスプラザダイシンカンパニー(宮城県/山田憲弘社長)の「街の便利屋さん」のように、リージョナルHCが御用聞き、リフォームを強化している例もある。

 いずれにせよ、HCがリフォーム市場で存在感を高めるには人材への投資が必須となる。「先進的窓リノベ2024事業」をはじめ、補助金の後押しがあるとはいえ、接客があるかないかで成約率は格段に異なる。追い風が吹いている今こそ、人に投資する千載一遇のチャンスである。

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