値上げで異変の「スシロー」親会社、海外・中国シフトでめざす成長戦略とは
怒涛の海外出店で、26年3月期の海外営業利益は国内越えへ
人口減などを背景に国内スシロー事業の売上成長は限られるなか、今後の成長の柱となるのが海外事業だ。同社は11年韓国に進出したのを皮切りに、18年台湾、19年シンガポールと香港、21年に中国本土に進出した。23年9月期末で135店舗(韓国9、台湾38、香港28、シンガポール9、タイ17、中国大陸34)を展開する。
新中計では、この135店舗を26年9月期末403〜416店舗と3倍以上に増やす。ポテンシャルの高いエリアを選定して出店する考えだ、最も出店数を増やすのが中国大陸だ。23年9月期末34店舗の6倍近い201〜203店舗に増やす。海外全体の400店舗強のうち5割を占めるのが中国大陸だ。
中国大陸は投資する地域を見極めながら店舗を拡大する。貿易規制対策で現地調達・加工の商材を増やすほか、すでに進出しているエリアでは複数ブランドを展開するという。処理水放出に対する中国の反発は一時的との見方は変えず出店を継続する。
既存の進出国・地域での出店だけでなく、新たにインドネシア、米国への出店にも乗り出す。東南アジア最大の経済規模を有するインドネシアは初のハラル圏への出店となる。インドネシア独自のハラル基準に則った商品開発と自社調達力で、おいしさと信頼感の両立を実現していくという。米国については、外食市場の成長が見込まれ、高級日本食ブームが続くなかで、中所得層をターゲットに寿司レストランビジネスを展開する。すでに市場調査を目的に23年6月に米国子会社を設立している。さらには、欧州やハラル圏への拡大も見据える。グループ内の全ブランドの海外展開する準備も開始する。
新中計最終年度の26年9月期は売上収益5200億円、営業利益350億円を見込む。売上収益は23年9月期の72%増、営業利益は3.2倍となる。このうちスシロー、京樽などの国内事業の計画は売上収益2950億円(23年9月期比25%増)、営業利益110億円(同91%増)だ。国内は979店舗を1046〜1063店舗に増やす計画で、増店数は3年で70〜80店舗にとどまる。新中計3カ年に計画する総投資額905億円のうち国内は395億円を振り向ける。店舗の統廃合を進めるほか、新店から既存店への投資にシフトするとしている。
これに対し海外事業は26年9月期に売上収益2250億円、営業利益280億円をめざす。売上収益は23年9月期の3.4倍、営業利益は3.8倍を計画する。海外事業は売上収益の4割を稼ぎ、営業利益では国内を上回ることになる。さらに、「売上収益1兆円に達したときに海外比率は60%になる」(水留浩一社長)見通しだ。国内での成長が頭打ちに近づくなか、海外事業の成否が同社の成長を左右することになりそうだ。