値上げで異変の「スシロー」親会社、海外・中国シフトでめざす成長戦略とは

2024/01/08 05:59
下田 健司
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回転寿司店「スシロー」などを展開するFOOD&LIFE COMPANIESが海外出店を加速する。2024年9月期から開始する3カ年の中期経営計画では海外事業の強化が最大の柱だ。中計最終年度(26年9月期)には海外店舗を23年9月期の3倍となる400店舗以上に増やす。売上高に相当する売上収益の7割を占める国内スシロー事業が今後の人口減や競争激化を受けて伸びしろが限られるなか、海外シフトを鮮明にする。

スシロー
(2019年 ロイター/Issei Kato)

 国内スシロー既存苦戦も 海外好調で営業利益は計画通り

 「スシロー」などを展開するFOOD&LIFE COMPANIESの239月期連結業績は、売上収益3017億円(前期比7.3%増)、営業利益110億円(同8.7%増)と増収増益だった。売上収益は計画値の3200億円に及ばなかったが、営業利益は計画値の110億円に達した。

 連結売上収益の約7割を占める主力の国内スシロー事業は、売上収益2059億円(同5.5%減)、営業利益110億円(同18.6%減)と減収減益で苦戦した。円安や水産資源の減少による食材調達コストの上昇、物流費・地代・資材費の高騰が響いた。コスト増を吸収するため、2210月に実施した値上げでは、客単価は上昇したものの客離れを起こしその後、既存店売上が低迷した。239月期の既存店売上高は、上期が15.2%減、下期が1%減で通期で8.4%減であった。

 23年1月には、来店客による迷惑動画がSNS(交流サイト)で拡散された。これを受け回転レーンに商品を流すサービスを2月に中止。23年9月には、選ぶ楽しさをデジタルで再現し来店を促そうと、店舗にデジタルモニターを設置し回転レーンを表示する「デジタルスシロービジョン」(通称デジロー)を3店舗で試験導入している。

 一方、連結売上収益の2割を占める海外スシロー事業は、香港・台湾・タイが牽引し、売上収益661億円(同72.7%増)、営業利益73億円(同116.5%増)と大幅な増収増益だった。積極出店を続け、中国大陸は成都、武漢をはじめ各地に25店舗を出店したほか、他地域・国も台湾8店舗、香港8店舗、タイ6店舗、シンガポール1店舗と出店し、店舗数は47店舗増加した。238月に開始された東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出の影響で23年9月は中国大陸を中心に客数が落ち込んだが、「影響は一時的で回復していくと期待している」(同社水留浩一社長)という。

 249月期の連結業績は、売上収益3500億円(239月期比 16.0%増)、営業利益115億円 (4.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益65億円 (17.7%減)を見込む。国内スシロー事業は売上収益2196億円(同6.7%増)、営業利益130億円(17.1%増)、海外事業は売上収益1000億円(同51.3%増)、営業利益95億円(同30.1%増)という計画だ。

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