高齢者も少なくない生花店への発注をデジタル化した「花キューピット」の工夫とは

2023/12/07 05:59
兵藤 雄之
Pocket

「クールなサービス」として注目を集める花キューピット

 インターネットなどでの注文受付業務などを展開する花キューピット株式会社の吉川登社長は「生花の通信販売はほかにいくらでもある。しかし、そのほとんどが宅配便によるお届けになっているのに対し、花キューピットは届け先の最寄りにある花屋さんが直接届けてくれる。単純にトラックなどによる配送距離は短くなり、それだけCO2の排出量抑制につながる。今風に言えば、SDGs的なサービスだ」と70年前に生まれたサービスが実は今の時代にこそ合っている点を強調する。同社は、2005年、当時、インターネットビジネスの立ち上げに力を入れていた住友商事(出資比率51%)と、花キューピット協同組合(同49%)によって設立された。現在は、JFTD100%子会社となっている。

 吉川社長は、70年前に生まれた花キューピットのビジネスモデルを、いま流の言葉に置き換えて再定義する。

 ひとつは、先ほどのCO2排出抑制につながる部分だが、注文1件1件に応じ、その届け先に近い加盟店が届けるという仕組みはUberEatsや出前館、Woltに代表される「デリバリーサービス」に近いものがある。

 また、生花のお届けものを、「花キューピット」というサービス上で一手に引き受けてしまおうというのは、まさしく「プラットフォーム的考え方」であり、A店(あるいは「花キューピット」のシステム)で注文を受けたものを、届け先に近いB店が代わりに届ける仕組みは「シェアリングサービス」そのものだ。

 生花は、野菜と同様の生ものだ。仕入れたものが売れ残れば、単なるロスになる。

 「生花を100仕入れて、全部、自店で売り切るのが理想だが、読みがはずれて在庫が生じることもある。そうしたときに、花キューピットからの依頼を受ければ、新鮮な在庫を、フラワーロスにすることなく、生花として活かすことができる」(吉川社長)

 配達も、宅配便を利用したサービスの場合、生花を傷めてしまわないよう梱包には相当、気を遣うことになるが、生花店からの配達なら、過剰に梱包する必要もなくなる。

 フラワーロスの削減、梱包資材の簡素化は、サステナブルにもつながっている。

 このように「花キューピット」は、いま流行りのキーワードで括ることのできるビジネスモデルと言えるだろう。

3年以内の全ての発注のデジタル化を目指す吉川登社長(花キューピット株式会社南青山オフィスにて、本田路晴撮影)
3年以内の全ての発注のデジタル化を目指す吉川登社長(花キューピット株式会社南青山オフィスにて、本田路晴撮影)

1 2 3
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態