「チョコザップ」開始1年余りで業界首位へ RIZAP取締役が明かす、驚きの成功を遂げた要因
“意識低い”トレーニング環境で運動を習慣化へ
すでに世の中に多くのトレーニングジムがあるなかで、チョコザップが大きく差別化できたのは前述のとおり、運動習慣のない人や女性にターゲットを絞った点だ。チョコザップでは、そうした人たちが運動しやすい環境づくりと、運動を習慣にするための工夫を随所で行っている。
たとえば、チョコザップにはダンベルやベンチプレスなど、筋トレ上級者向けのマシンを設置していない。これらを設置すると、筋トレ上級者の会員が増え、初心者が通いづらい環境になってしまうからだ。
「筋トレ上級者が多いと、初心者が気おくれする原因になる。トレーニングに取り組む意識が過度に高い人を集客しないチョコザップは、初心者にとって気楽な環境といえる。SNSの反響では『ほかの利用客は2分だけトレーニングしてどこかに行ったり、セットの合間にスマホをいじったり、みんな意思が弱そうでとても心強い』という利用者の声があった」(鎌谷氏)
こうした反響は、RIZAPグループのねらいどおりだという。鎌谷氏は次のように続ける。
「たとえばパーソナルジムのRIZAPは、完全個室を用意している。他人と比較して一喜一憂するのではなく、自分自身が目標に近づいていればよいという考えのもと、他人と比べる機会をなくす環境にした。チョコザップでは、『周囲に人がいてもマイペースにできる環境』をつくることを心掛けた」(鎌谷氏)
服装を自由にしたのも戦略の一環だ。「業界では、トレーニングする際にウエアに着替えるのが常識とされている。しかしあるとき、よく考えたら着替えなくても運動はできると気づいた。たとえば上半身を鍛えるマシンであれば、革靴のままでも問題ない。着替える手間が省かれ、ウエアを買い揃える必要もなくなれば、初心者が利用する際の経済的ハードルや心理的ハードルが下がる」(鎌谷氏)
とくに心理的ハードルが高いと、初心者がすぐに退会してしまうケースが多い。トレーニングジム業態の収益面の課題は、その点にあった。一般的なトレーニングジムでは、入会した会員の半分が1年以内に退会するという。それは「筋トレ上級者の設計による、筋トレ上級者のためのジム」になっているためだ。だからこそ初心者が気おくれし、「自分はトレーニングに向いていない」と感じ、やがて退会してしまうという悪循環につながっていた。
鎌谷氏は「一般的なジムの平均滞在時間は1時間を超えるが、チョコザップは30分程度。『長時間やらないとトレーニングは効果が出ない』と思い込んでいる方が多いが、短時間でも運動を習慣づけることに大きな意味がある。毎日5分でも運動習慣をつけてもらえれば幸いだ」と述べる。