ロハコ悲願の黒字化?ヤフーとの連携で進める、アスクル収益性向上の秘策とは
中計で示した利益率向上への施策とは
決算発表で公開された2022年5月期~2025年5月期の中計は、そうした部分を強く意識した内容となっている。
最大のテーマはDX(デジタル変革)。発注、物流におけるDXをより徹底することで、人材における課題とさらなる効率化を推進し、無駄や人件費を抑え、人手不足にも対応する。
具体的には(1)物流拠点に最新のロボットを導入し労働負荷を軽減(2)日本最大級のBtoBプラットフォームに蓄積されたビッグデータを活用した商品開発・物流・マーケティングの最大化などだ。
さらに中小企業向けのアスクルWebサイトと中堅大企業向けのソロエルアリーナWebサイトを統合(2023年5月期予定)。それにより、購買を集約させ、購買頻度を高め、同時に購入単価の向上を図る。
こうした施策で効率化を図りつつ、売り上げ単価の向上も実現し、“弱点”といえる低めで推移を続ける営業利益率からの脱却を図る。
「LOHACO」黒字化の道筋は
「LOHACO」もさらなるテコ入れを図り、23年5月期の黒字化をめざす。具体的には、PayPayモール店と本店の棲み分けを明確にし、相乗効果を最大化する。物流でもBtoBと共通化し、翌日発送を拡大するなどでサービスを向上させる。さらには、アスクル株式の45%超を握るZホールディングスの集客や広告、決済も最大限に活用し、シナジーを追求する、などである。
いずれの施策も真新しさはなく、派手さこそないが、同社が改善すべきポイントにしっかりフォーカスされており、まさに「磨き込み」により、理想を目指すスタイルが徹底されている。
これらにより、次期は、売上高4300億円(1.9%増)、営業利益140億円(0.5%増)、経常利益139億円(0.4%増)、親会社に帰属する当期利益90億円(16.0%増)を見込んでいる。
さらに2025年5月期には売上高5500億円、懸案の営業利益率は、5%(今期3.3%)、そしてBtoC事業の中核LOHACOの売上は、743億円(21年5月期528億円)を見込む。
アスクルにおいては4000億円を超える売上高に目を奪われがちだが、現在の営業利益率の水準はEC企業としては高いとは言えない。
今後、コロナ収束を見据えても、EC市場全体における競争がより過当になることは必至の状勢なだけに、同社がそこでどのように存在感を示すのか、あるいは… 一定の地位に君臨するだけでなく、ZOZOと合わせソフトバンク・ヤフーの流通戦略をどう牽引する存在となるのか、EC企業の勢力図を占う上でもその動向からしばらく目が離せそうにない。