今、最も成長著しい食品スーパー企業の1つと言えるロピア(神奈川県/高木勇輔社長)。
同社は19年に新会社eatopia(イートピア)を立ちあげ、外食事業にも参入していることで知られる。そんな同社が、新型コロナウイルス感染拡大下で外食業界が落ち込むなか、次々と新たな飲食店をオープンしていることをご存知だろうか。そのうちの2店を実際に訪問し、ロピアの外食事業の今に迫った。
銀座に完全個室制の
フルサービス焼肉店を開業
最初にロピアの外食事業が話題になったのは2019年4月、千葉県松戸市の商業施設「キテミテマツド」内に出店した「ロピア松戸店」内に、割烹料理店「窯焼き割烹 黒泉」をオープンした。精肉専門店のバックヤードにひっそり設けられた店で、完全予約制で提供メニューは5000円(税抜、以下同)の1コースのみ。おそらく実験店という位置づけから、ウニやキャビア、フカヒレなどを使った採算度外視と思われるメニューを提供し、業界関係者だけでなく一部のグルメ通からも注目を集めた。
本格的な飲食店をオープンしたのは19年11月。東京・銀座にオープンしたこだわりの飲食店を集積した商業施設「GICROS GINZA GEMS(ジクロス ギンザ ジェムズ)」7階に焼肉店「銀座山科」を開業した。
同店は精肉店を起こりとするロピアの強みを生かし、上質な和牛をリーズナブルに楽しめることをコンセプトにした店だ。完全個室制で、専属の焼き師が肉の状態や部位・カットに合わせ火入れまで行う。贅を尽くしたメニュー・サービスでありながら、コース料理は税抜1万円~と、銀座という立地を鑑みると比較的リーズナブルに楽しめるため、グルメレビューサイトでも高評価を獲得する人気店となっている。
ビストロや串焼きも!
肉を軸に多様な店舗展開
そしてロピアはここ半年ほどで外食事業を加速させている。20年9月には同施設8階に、こちらも完全個室制の焼肉店「やましな別館」を開業した。
また同じく20年9月には、ミシュラン1つ星獲得店で熟成肉のパイオニアとも言われる精肉専門店のナカセイ(東京都)の、東京・小石川にあるレストラン併設の精肉店「中勢以 内店」をリニューアルオープンする。ロピアは同店を買収していると見られ、これを機に前述の実験店「窯焼き割烹 黒泉」は休業し、その料理長はじめ調理スタッフ陣が同店の運営を手掛けているようだ。
さらにイートピアが情報を掲載している求人サイトによると、今年1月には東京都・白金に新業態のビストロを開店したほか、春には銀座に炭火串焼きダイニングもオープン予定だという。このように肉料理を中心にさまざまな飲食業態の出店を一気に進めているのだ。
では、ロピアが運営する飲食店とはどのような店なのか。実際に「やましな別館」と「中勢以 内店」を訪れた。「やましな別館」は、1号店と少し変化をつけた店で、「江戸前焼肉会席」を掲げ、焼肉を懐石スタイルで提供する。
店内は、モダンなデザインのオブジェや絵が各所に飾られ、落ち着きのある洗練された空間が広がる。着物を着た女性が接客してくれ、「銀座の高級店」といった雰囲気だ。現在提供するのは1コースのみで、前菜、温菜、焼き物、揚げ物、口替り、煮物、焼き物、ご飯もの、デザートがついて、価格は1人・1万8000円だ。
印象的だったのは、贅沢感を味わえる食材のチョイスと提供方法だ。たとえば前菜は、さまざまな器に、フォアグラやウニ、ふぐなどが盛り付けられ、花まで添えられている。焼き物は料理長自らが個室を訪れ、目の前で焼き上げてくれる。デザートメニューの干し柿が苦手だと事前に伝えると、代わりのイチゴを木箱に入れて部屋まで運び、こちらも目の前で皿に取り分けてくれるという接客のこだわりようだ。
専門的な熟成調理による
黒毛和牛のメニューを提供
次に訪れた東京・小石川の「中勢以 内店」は、熟成和牛の専門店で、店の奥にあるレストランで、店頭で販売する素材を使った料理が楽しめる。
看板メニューは「熟成肉のグリル食べ比べ」(180g)と熟成肉のハンバーグのほか4品に、パスタorカレーライス、デザートがついて1人・1万2000円(別途サービス代)のコース料理だ。
しかし、この日は緊急事態宣言下でコース料理を提供していなかったため、好みの部位をショーケースから選んでアラカルトで注文。神戸牛の「イチボ」「カメノコ」「シンシン」を各約200gオーダーして約1万6000円だった(価格は相場によって変わる)。
従業員の説明によると「厳選した黒毛和牛を一頭買いにより仕入れて2カ月ほど熟成している。このような肉はほかではほとんど食べられない」そうだ。実際に食べて見ると、そのうま味や香り、味わいは一般的な熟成肉と一線を画し、その美味しさに驚いた。
世界が誇る「和牛」で
海外への出店も!?
ロピアは経営目標に2031年までにグループ売上高1兆円の達成を掲げる。ロピアの21年2月期の売上高は2086億円で、この強気の目標を同社は「食品総合流通業」をめざすことで達成するという。 飲食事業への参入はこのなかの1つの施策だ。
今回、ロピアが展開する飲食店2店を訪れて感じたのは、同社が専門性の高い食材・調理法による飲食の提供に挑戦しているということだ。
同社は将来的に海外への飲食店の出店をめざしているという噂も漏れきく。世界的に評価の高い日本の和牛の専門的な知識とそれを生かした飲食店の運営ノウハウを構築することで、国外での成長も見据えているのかもしれない。