日本チェーンドラッグストア協会(神奈川県:以下、JACDS)は、2018年12月7日に東京都港区の「メルパルク東京」で年頭所感を発表した。
「18年は業界に激震が走った。18年6月、JACDS立ち上げから先頭に立ち、活動を引っ張ってきてくれた宗像守事務総長が急逝した。
また、諸外国ではがん患者が減っているのに日本だけが増えているという事実も大きなショックだった。はたして、われわれは地域社会に対し何を提供してきたのか。業態として変化しながら成長してきたが、地域の健康にどれだけ役に立っているのか。地域の一員として健康増進にどうかかわっていけるのかという視点は、課題として認識しておくべきだ」
「19年は協会設立20周年の大きな節目の年だ。現在、当協会のドラッグストア(DgS)企業だけで、地域の処方せんの10%を扱う規模になった。将来的にはすべてのDgSで調剤ができるようになるのがいちばんいい。現実的には調剤のないDgS、薬剤師不足という問題から調剤併設率が低くなっているところもあるが、併設率を上げながら、地域貢献ができれば最高だと考えている。
また、DgSは健康に関する相談ができる『コンシェルジュ』としての役割も期待されている。そのようなDgSになることができれば、地域における役割も大きくなるし、そうなるべきだとも考えている。地域社会に大きく貢献できるよう、社会に喜ばれるDgSとして、19年はそういう方向に大きく舵を切っていきたい」
「この数年は、医師から処方せんをもらい、薬局で調剤してもらうという、医薬分業が大きな流れだった。しかしながら、この医薬分業という流れは、今また180度の方向転換をしていくかもしれない。今後は医(病院)と薬(薬局・薬剤師)とが協力しながら、どうやって地域の健康を守っていくかが大きな課題となるからだ。われわれDgSとしても、その流れの中で、処方せんを扱うだけの存在にとどまっていてはならないと考えている」
「DgSが食品販売の分野でも、大きな役割を果たすようになっている。商業動態統計ではDgSの売上に占める食品の割合は27%に上っている。クスリのアオキ(石川県)単体で見れば40%近くもあり、その割合は年々高まっている。
しかしこれは、われわれが食品分野に攻め込んだということではなく、高齢化社会に対応する業態として不可欠だから取り組んだという認識だ。高齢になれば外出もままならない。クルマで遠出ということも難しくなる。そうなると、朝食のパンをどこで買ったらいいのか。健康に関する相談、一般用医薬品(OTC)の購入、処方薬の受け取りなどで訪れることの多い近所のDgSで食品を購入できれば便利だ。年々食品比率が高まっているのは、そういう高齢者が増えている結果ととらえている」
「DgSの役割として『地域包括ケア』という言葉がたびたび出ているが、一生懸命討議する機会がない。病院、薬局、DgS、医薬品卸など、それぞれが知見やノウハウを出し合えば、地域包括ケアのためにいろんなことができる。
現在は70歳以上の人の半分ががんに罹る。しかし、がんになっても、薬の正しい服用で長生きできる、病気との共存共栄を図りながら人生を全うできる。そういう社会にしていくためにどうあるべきか。大事なのは、医療分野のプレーヤーがそれぞれの垣根を取り払い、社会に貢献できる仕組みをどうつくり上げることができるかだ。
JACDS加盟企業はOTC全体の90%以上を扱っている。『医薬品を売る以上は責任がある』という自覚をしっかりと持ち、地域包括ケアの流れの中心にあるのがDgSでありたい。『社会貢献なくして企業なし』という強い思いがある」
『ダイヤモンド・ドラッグストア』 2019年1月15日号掲載