島村楽器・廣瀬利明社長に聞いた「過去最高売上」連続更新の裏側_過去反響シリーズ
DCSオンラインで過去に反響の大きかった記事を紹介!(初公開2023年11月13日 記事は取材時の状況)
イオンやパルコなどショッピングセンターに数多く出店し、2023年10月現在で全国39都道府県に180店舗を展開する島村楽器(東京都)。店舗数、売上ともに業界ナンバーワンの総合楽器店だ。経営の舵を取るのは、今から10年前の2013年に創業者からバトンを受け取った廣瀬利明社長。社長就任後は2年連続で減益となったものの、その後は業績回復のみならず、目覚ましい成長を遂げ、10年間で売上を1.5倍、営業利益を3倍に引き上げた手腕が注目される経営者だ。楽器の販売手法、そして、これからの市場はどのように変わっていくのか。2年連続で過去最高売上を更新し、業界トップをひた走るリーディングカンパニーの経営トップに話を聞いた。
新型コロナウイルスが楽器販売に及ぼした影響
まず気になるのが楽器の売れ行きについて。人口の減少に伴い、楽器を演奏する人も減るのが自然な流れ。楽器の売れ行きにも陰りが出て市場は縮小しているのではないか。新型コロナウイルス流行下では、人の動きが制限され、楽器を演奏する機会が失われたことによるダメージもあったのではないか。廣瀬利明社長は、業界全体の動向についてどう捉えているのだろうか。
「楽器の市場は微減ながらずっと縮小傾向だった。ところがコロナの流行によって、いわゆる巣ごもり需要の恩恵が受けられ、3年ほどは楽器の市場が少し拡大した。ただし、その効果もほぼなくなりつつあり、これから先はまたコロナ以前のように市場が縮小していく傾向に戻るのではないか」(廣瀬社長)
巣ごもり需要の恩恵で、売れ行きの伸びがもっとも顕著だったのが電子ピアノで、アコースティックギターも販売が好調だったという。アンプにコードを接続する必要がなく、そのまま弾ける手軽さが受け、同じ理由でウクレレも売れた。緊急事態宣言で店を開けられない時期もあったものの、営業再開後はこの3種類の楽器は前年比2~3倍の売れ行きを記録した。購買層は年代を問わず、自粛期間中に楽器の演奏に挑戦してみようと考えた人が多くいたようだ。
その一方で売上減が顕著だったのがトランペットやサックスなど飛沫が飛ぶ管楽器で、学校で吹奏楽部の活動が大幅に制限された影響も大きく、一時は売上が半減するまでに落ち込んだという。
また楽器販売と並ぶ島村楽器の事業の柱である音楽教室でも、新型コロナ流行によるダメージを受けた。そもそも島村楽器の歴史が始まったのは音楽教室からで、日本有数の音楽教室運営会社としても知られる。
「音楽教室は島村楽器の売上の2割ほどを占める非常に重要な事業。しかし密室で講師と生徒さんが一緒になるため、『コロナに感染するのが恐い』という理由で退会された方がいらっしゃった」と廣瀬社長。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2類から5類になり、人びとの暮らしが正常化して、生徒数がコロナ前の水準に回復するまでには1年半ほどの期間を要したという。