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Tシャツ店から「グラフィックライフストア」へ華麗な転身!グラニフの再成長戦略

ユニクロ一強のアパレル業界に、独自の戦略で勢いづくアパレル・雑貨チェーンがある。グラフィックを軸にTシャツや雑貨を展開するグラニフ(東京都/村田昭彦社長)だ。2000年の創業からオシャレなTシャツ屋の印象が強かったが、2021年に経営刷新でリブランディング。「グラフィック」を全面に押し出した総合グラフィックライフストアに生まれ変わり、快調に業績を伸ばしている。

グラフィックが主役 

2023年12月に原宿にオープンしたグラニフ東京の売場

 白を基調にした店舗は、モール内に出店していても思わず目を引く存在感がある。吸い込まれるように店内に足を運ぶと、個性的なキャラクターがあしらわれたアパレルや雑貨が来店者に訴えかけてくるーー。

 グラニフが展開するアイテムは、Tシャツはもちろん、雑貨、絵本など幅広い。ただ、同社アイテムにおいて主役はあくまで「グラフィック」だ。だから扱うアイテムは、Tシャツでも雑貨でもいい。そこがキャンバスとなり、キャラクターが描けるからだ。店舗が白基調なのも、そうしたコンセプトを具現化しているに過ぎない。

 もともとはオシャレなTシャツ屋の域を出ていなかった同社。それでも十分に個性の強いキャラクターが顧客のハートを掴みファンを育んできた。だが、Tシャツだけでは限界がある。なにより、グラフックを描くキャンバスがTシャツ限定ではもったいない。それだけのポテンシャルが同社にはあるからだ。

2021年、リブランディングでTシャツ屋から脱却

ブランドディレクターの勝部健太郎氏

 そうした中で2020年、新社長として村田昭彦氏が就任する。同氏はオンワード樫山を経て、ネットプライスなどに在籍した後、2007年にベイクルーズに入社。EC事業の売上高を大きく増進させた。その村田氏が、同社のポテンシャル最大化を見据え、着手したのがリブランディグだ。

 村田社長とともに、リブランディングの指揮をとった同社ブランドディレクターの勝部健太郎氏が明かす。「リブランディングにあたり、まず着手したのはステイトメントの再定義。我々が何を提供したいのかを考え、行き着いたのが“グラフィックのある豊かな暮らしを提供する”こと。Tシャツだけはなく、グラフィック製品全般を取り扱うブランドに生まれ変わった」

 アイテムを絞り、個性を軸にアパレル業界で存在感を示してきた同社。それをTシャツ以外のアパレルアイテムや雑貨全般へ広げるとなると、事業の大変革にも思える。だが、同社の顧客はTシャツに描かれるキャラクターの熱烈なファンが多く、むしろアイテムが増えることを歓迎する土壌がある。それこそが、同社がこれまで20年以上にわたり、蓄え、磨き上げることで培われた“ポテンシャル”だ。

 Tシャツにプリントされたキャラクターで同僚や友人との話が盛り上がる、プリントされたキャラクターがかわいくてマグカップを買う、個性的なグラフィックのパーカーを着て出社して「おしゃれ」と言われる。アイテムが増えれば、日常の中で人の目につくシーンが増え、そこで会話の機会が発生する。そうして、なにげない日常に変化や刺激が与えられ、それが豊かな暮らしへとつながる。

組織体制も刷新し、唯一無二の事業体へ

特に人気の高いキャラクター「BEAUTIFUL SHADOW」と「IKAKU」

 アパレル業界では、機能性やコスパが選択基準になりつつある。ある意味ではファッションの醍醐味が減退傾向にあるだけに、ワクワクしながら商品選定できる同社のアイテムは、より際立つのかもしれない。

 「リブランディング後の同社の業績は」といえば、「2023年6月期でいえば売上は約110億円、前年比126%で、着実に伸びている」と勝部氏は大きな手応えがあることを明かした。

 取り扱うアイテムの多様化に伴い、組織運営体制も村田社長のもと刷新。それまではやや直感的だったという商品開発や販売計画の立案などを、組織編成から見直し、プロダクトも数字やデータからニーズやトレンドを予測することで、よりムダなく、売上をブラさないよう最適化した。

「これまでは商品開発がこんな商品を作ったので売って欲しいと伝え、店舗やECコマースのチームが別々にプロダクトの紹介をするなど、別々に活動していた。それらを組織全体で計画し、場当たり的な商売からブランド全体で構造化する商売への転換を図った」(勝部氏)

 よく言えばこれまではクリエイティビティを活かすやり方だったが、一方で計画性がなく、業績が落ち込むと回復が難しくなりかねないリスクがあった。そこを役割別に大きく組織を再編成することでより計画的に、さらに販売データなども最大限に活用し、マーケティング力を強化した。

 併せて、それぞれのキャラクターのペルソナを明文化、緻密に世界観を特定することで、ものづくりやコミュニケーションのブレを排除。キャラクターを主人公にした絵本の出版もそうした施策をより効果的にする一環だ。また、重点キャラクターを絞り込むことにより、展開商品数やマーケティングリソースを分散させず、熱烈なファンづくりと商売効率性の向上を図ってきた。

NFTへも進出し、世界を視野に

「Control Bear」はNFTにも展開

 取り扱いアイテムの拡大はデジタル領域にも及ぶ。人気キャラクターをNFTに展開し完売するなど滑り出しは順調だが、視線はその先を見据えている。世界進出だ。

 デジタル領域への注力は、国境を容易に超えられるネットの特性を最大化する上で有利になる。同社のアイテムはインバウント客にも人気で、グローバル市場で需要があることがすでに分かっている。世界でも受け入れられる手応えはある。リブランディングによって同社はいま、そのポテンシャルを海外に広げるフェーズに入っている。

「いずれはアパレル以外の売上構成比が半分以上になっていけば」と展望を語る勝部氏。現在はアパレルが9割を占めるが、再定義したステイトメントを実践していけば、自ずと会社全体の商品構成比率も変わっていく。

さらにアイテムが増えれば、グラフィックのよさをアピールする方法も多様になり、展開する国の特性やニーズに合わせた戦略も練りやすくなる。

新スローガンでグラフィック企業として次なるステージへ

グラニフ東京に併設されたカフェ

 2023年6月から掲げる新スローガン「Graphic is My Life.」は、社内外へ向けたメッセージ。常に意識することで、グラフィックを軸とするブランドであることをより深く浸透させ、それによってプロダクトづくりにもさらに磨きがかかる。

 よりおしゃれに、より斬新なファッションを、より手頃にこうした、これまでのアパレル企業が目指してきたスタンスとは一線を画す、「グラフィックありき」のプロダクト企画。5年後、10年後、アパレル企業と呼べる事業体なのかも分からない柔軟性に富んだその成長戦略は、「売れない」と息詰まるアパレル企業にとって、参考にすべき要素が盛りだくさんといえそうだ。