決定!「第2回サステナブル・リテイリング表彰」 オイシックス、アークス、セブンの施策が受賞
それでは、第2回の審査結果を発表しよう。
今回は、「プロダクト・イノベーション賞」としてオイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長)の「アップサイクル食品開発の取り組み~Upcycle by Oisix~」が、「Leave no one behind(誰も取り残さない)賞」として、アークス(北海道/横山清社長)の「買物難民対策」が、「企業間連携賞」として、セブン‐イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)、サンデン・リテールシステム(東京都/森益哉社長)、東洋エンジニアリング(千葉県/細井栄治社長)、日立製作所(東京都/小島啓二社社長兼CEO)、リコー(東京都/大山晃社長)の5社による「先進的な省エネ・創エネ・蓄エネ設備を備えた新たな環境負荷低減店舗の挑戦」が受賞した。
オイシックスの商品
プロデュース力に脚光
順に各施策を紹介していきたい。
まず、「プロダクト・イノベーション賞」を受賞したオイシックス・ラ・大地の「アップサイクル食品開発の取り組み~Upcycle by Oisix~」だ。食品小売業にとって、「商品」はビジネスの核となるものである。最近ではそんな「食」「商品」を通じてサステナビリティを実践する食品小売企業が徐々に増えつつあり発展が期待される。そうしたなか、同社の施策は先進的なものであると受賞に至った。
食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地は、日本で発生する食品ロスのうち、半分以上が食品メーカーや小売店など食品関連事業によるものであるという社会課題を目の当たりにしていた。そうしたなか、アパレルを中心に他業種で進みつつあった、捨てられているものに付加価値をつけ新たな製品とする「アップサイクル」に着目。21年7月にフードロス解決ブランド「Upcycle by Oisix」をスタートした。23年9月末時点で開発したオリジナル商品は79品で、計約96トンの食品ロス削減に寄与している。
未活用食材に
付加価値とストーリーを
同社施策が高く評価されたのは、定量的な結果が出ていることに加え、同業他社や他業種からも評価される商品開発力である。
「Upcycle by Oisix」には、「なすのヘタチップス」「国産穴あきわかめの玄米スナック」「皮ごとかぼちゃとはじかれるくるみのパウンドケーキ」など、さまざまな未活用食材を活用した商品がある。
同社の応募担当者によると商品開発のポイントとして「使用する食材の部位や加工方法、味付けなどによって未活用食材の持つ特長を価値に変換することを意識している。また誰かにふと話したくなるようなストーリー性を持たせ、また『どんな味?』『その部位って食べられるの?』といった疑問や興味をもってもらうことで、フードロス削減の輪が広がることをめざしている」という。
こうしたオイシックス・ラ・大地の商品開発・プロデュース力が注目され、食品メーカーからの共同開発の依頼が増えている。チョーヤ梅酒(大阪府)とは、梅酒に漬けた後の梅の実を使った「梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ」を、飲食チェーン展開のプロントコーポレーション(東京都)とは、コーヒーを淹れたあとに残るコーヒー豆かすを活用した「コーヒーから生まれた チョコあられ・黒糖あられ」を共同開発した。
「Upcycle by Oisix」を扱う食品小売店も増えている。ライフコーポレーション(大阪府)が展開する自然派スーパー「ビオラル」や、ローソン(東京都)が展開する健康志向フォーマット「ナチュラルローソン」など、販売店舗数は約270店まで広がっている(23年9月末)。
選考委員の間でも、オイシックス・ラ・大地の商品開発・プロデュース力を評価する意見が多くあがった。
渡辺林治氏は「食品小売業と食品メーカーはこれまでもプライベートブランド商品をはじめ商品を共同開発してきた。しかしチョーヤ梅酒のようなメーカー側が食品小売業側の商品開発の技術力を積極的に評価し、付加価値型商品を共同開発する例は貴重で、今後の拡張性も期待できる。オイシックス・ラ・大地の着眼点の良さや、買い手を楽しませ、購買意欲を促す商品開発力を高く評価したい」とコメントしている。