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ワールド、わずか2年でストラスブルゴを再生させた手法と要因とは 今後の攻めの戦略を明かす

ストラスブルゴを運営していたリデア社が民事再生法の適用を申請したのは2020年11月。その後、ワールドの子会社であるワールドインベストメントネットワーク(以下WIN)と日本政策投資銀行が共同出資して設立したW&Dインベストメントデザイン(以下W&DiD)が支援。

そこからわずか2年で収益力の回復と財務体質の改善を果たし黒字化へ、2023年3月末にはワールド(兵庫県/鈴木信輝社長)がストラスブルゴを100%子会社化した。短期間で再生に至った要因と、ワールドが描く今後の事業展開について、WIN 副社長の廣橋清司氏とストラスブルゴ(東京都)社長石原秀樹氏に聞いた。

子会社化に至った経緯はブランド価値と人材力

ストラスブルゴ銀座店

 イタリアのキートンを代表例に数々のハイクオリティなブランドを日本に提案し、定着させてきたセレクトショップのストラスブルゴ。そのストラスブルゴがわずか2年で再生を成し遂げたのは、国内でも類を見ないラグジュアリーセレクトショップである点と、高価格帯の商品を販売できるスタッフを有している点が大きい。

 国内にセレクトショップは多数あるが、客単価が12万円を超え、かつ小売と卸のどちらの事業も手掛けている点で、ストラスブルゴは他と一線を画している。「ワールドのブランドポートフォリオにラグジュアリーブランドがなかったので、非常に魅力的だった」と、WIN 副社長の廣橋清司氏は子会社化の理由にストラスブルゴのブランド価値を挙げる。

 また、高価格帯の商品を販売できる人材力も強みだ。ストラスブルゴ社長の石原秀樹氏は「接客業の基本である5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の徹底はもちろん、さらに重要なのはファッションへの熱意と顧客に喜んで欲しいという精神。このようなホスピタリティマインドを、スタッフ一人ひとりが現場や研修を通してしっかりと身につけている」と語る。

ワールドグループの支援により数値管理が強化された

 以前のストラスブルゴは、数値管理が甘かったと石原氏は話す。これを改善するため、仕入れ、在庫、売上、経費など、あらゆる指標を数値化した。例として予実管理を挙げると、各ブランドやアイテムごとに詳細な利益目標を設定。その数値を週ごとに精査し、必要に応じて修正を加えた。

 「入口から出口まで、全てのプロセスを細かく数値で管理した。これが、WINとW&DiDが支援に入って最も変わったところ。特に、課題となっていた在庫の適正化が進んだことは、ストラスブルゴが再生した大きな要因と言える」(石原氏)

 WINには、バリューアップ専門のチームがある。そのチームメンバーが、生販管理やKPI指数管理などをはじめとした事業マネジメントに関するノウハウを、ストラスブルゴに共有した。さらに、ただ共有するだけでなく、週1回のミーティングを通して現場の実情を確認し、実現できるまで併走していった点がポイントだ。

 廣橋氏は「コンサル型のアプローチではなく、実際に手を動かして一緒に業務を進める、いわゆるハンズオン型で進めてきた。これよって、お互いのスピード感が分かり、歩調を合わせながらワールドの手法を導入できた。さらに、ストラスブルゴ特有のラグジュアリーブランドの業態を考慮しながら運用した点も、わずか2年で再生できた大きな要因だろう」と話す。

現場からの声が本部に集約される

卸から手がけるイタリアブランド「クルチアーニ」

 イタリアをはじめ、海外ブランドの中には、日本に進出したいが販路を見いだせていない事例が多いという。ストラスブルゴが総代理店として、そういったブランドの受け皿になる。

 なお、ブランド選定においても、小売と卸の両方を手がけている点が活きる。商品を仕入れてから顧客に届くまでの全過程を把握できるので、あらゆる情報が本部に集約される。毎週のミーティングで顧客の要望やニーズの変化を捉えるのはもちろん、各店舗のバイヤーからも情報を収集する。このような、現場でしか分からない情報の蓄積がブランド選定に役立つのだ。

 「ブランドを目利きする際のポイントは、潜在ニーズを把握する力。小売と卸の両方を手掛けるストラスブルゴでは、その力が養われている。だから、まだ国内で展開されていない潜在ニーズの高いブランドを探せる」(廣橋氏)

 また、そのブランドをただ日本で展開するだけでなく、アレンジも重要だと石原氏は言う。「例えば、襟の形を変えたり肩パッドの厚さを調整したりと、細かいところを日本人に合わせてカスタマイズしている」。これもまた、現場の声があるからこそ、高い精度で実現できる。

 先ほど挙げた数値管理だけでなく、このような現場力もストラスブルゴの強みであり、総代理店としての強みでもある。

今後はプラットフォーム事業を強化

ストラスブルゴ社長の石原秀樹氏

 ストラスブルゴは今後、ワールドとともにプラットフォーム事業を強化する。WINとW&DiDがストラスブルゴで実践したような「ブランドを成長させるノウハウ」をシステム化。海外から日本に進出するブランドの受け皿となり、強力にサポートしていく。

 「新ブランドを日本で展開していき、直営店を出せるくらいまで成長させる。そうすれば、また新しいブランドを展開しやすくなる。この循環を作ることで規模を大きくしていきたい」(石原氏)

 わずか2年でストラスブルゴを再生させたノウハウが、今後は別のブランドで展開されていく。ストラスブルゴの動向はもちろん、ワールドのプラットフォーム事業からも目が離せない。