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ナルミヤ・インターナショナル國京紘宇新社長が語る、EC軸とする新たな成長戦略とは

子供服専門店大手のナルミヤ・インターナショナル(東京都)では20235月、取締役執行役員常務から昇格するかたちで國京紘宇氏が新社長に就任した。同社を立て直した石井稔晃前社長から、約13年ぶりのバトンタッチとなり、今後のかじ取りが注目されている。百貨店・SC(ショッピングセンター)・ECとまんべんなく事業展開する「マルチチャネル・マルチブランド戦略」で、業績をV字回復させた同社。國京新社長に今後の事業展開や抱負を聞いた。

成長に合わせて買い替えが必要な子供服

プティマイン店舗

――20232月期(2022年度)の業績は、大幅な増収増益でした。コロナ禍の影響がまだ残っていた中、好調だった理由について教えてください。

國京 まずは、石井稔晃前社長が打ち出した「マルチチャネル・マルチブランド戦略」が奏功し、事業基盤が安定化できてきたのが大きいと考えています。加えて、市場環境にも恵まれていたと言えるでしょう。

コロナ禍でファッションビジネスは総じて苦戦を強いられましたが、実は子供服は比較的堅調だったのです。大人の場合「外出できないし収入も減ったから、今シーズンは購入を控えよう」となったところ、小さな子供はどんどん大きくなるので、それに合わせて服も買い替えなければならない。一定の需要が確保できたわけです。もっとも、ほかのファッションのように、コロナ禍が収束したことによる売上の「反動増」も少ないのですが。

――とはいえ、子供服業界でも業績が低迷した企業も少なくありません。

國京 当社の商品が、それだけお客さまに支持されている証と、うれしく受け止めています。例えば、「お母さん目線」に立った、商品の機能性に徹底してこだわっています。自社の主力ブランド「プティマイン」の商品には、ネーム用タグを二重に付けていますが、なぜかと言えば、耐久性が高くて長く着られるので、上のお子さんが保育園を卒園したあと、タグを一枚取れば下のお子さんにも使えるからなんです。さらに、当社が頭を抜けられた理由としては、商品企画の精度が上がって、顧客ニーズにフィットしていることも挙げられるでしょう。受発注や在庫コントロールの適正化、利益率の向上にもつながっています。

マルチブランドのポートフォリオも重視

メゾ ピアノ店舗

――社長に就任されてから、2023年度の足元の業績はいかがですか。

國京 2022年度よりも順調な立ち上がりです。「コロナ明け」のムードが高まり、お客さまが店頭に戻ってきているのが大きいですね。例えば、プティマインが伸びていますし、海外ライセンスの「ケイト・スペード ニューヨーク キッズ」「ポール・スミス ジュニア」なども勢いが増しています。

――一方で、2008年にスタートしたECチャネルにも、力を入れています。

國京 現在、ECの売上規模は80億円を超え、EC化率は約25%まで拡大しました。ECはコロナ禍でにわかに脚光を浴びましたが、中長期的に見て、販路としてウエートが増すことは明らかです。早めに手を打っておくのに、越したことはありません。ただし、重要なのは、あくまでもリアル店舗とECのシナジーを追求するOMOです。 EC化率のアップにはこだわっていません。それよりも今後は、ECならではの特性や強みを生かしていきたいと考えています。

――具体的にはどのように生かしていくのでしょうか。

國京 当社は、ZOZOTOWNや楽天といったE Cモールにも出店していますが、ECの売上構成比では、自社サイト「ナルミヤオンライン」が約50%を占めます。当社はマルチブランド戦略を展開しているので、ナルミヤオンラインにも15ブランドが集結し、ワンストップ・ショッピング、比較購買や使い分けができるのが、ほかの子供服ブランドと違った特性です。

例えば、「比べてみたら、違うブランドで同じようなアイテムが複数ある」といったことがわかり、カニバリを解消しやすくなります。それに、「ブランドの強み、差別化のポイントは何か」という、ブランディングに磨きをかけることにもつながります。例えば、ひと口に「おいしい」と言っても、ケーキとラーメンのおいしさは、全く違いますよね。同じように、「かわいい」と言っても、当社のプティマインと「メゾピアノ」のかわいさは、それぞれ違うはず。その違いをブランドコンセプトとして落とし込んで、「お客さまにきちんと伝えられるようにする」ことを、マルチブランド戦略の今後の課題に掲げています。これまでは、各ブランドを育てることに主眼を置いていましたが、これからは、マルチブランドのポートフォリオ戦略、マネジメントも重視します。

リセマインはEC生まれの新ブランド

國京紘宇社長

――確かに、リアル店舗で自社ブランドをあちこち見て回るよりも、オンラインのほうが比較しやすいですね。

國京 今後はECサイトの利点を生かして、機能をもっと拡充していきたいですね。例えば、現在のナルミヤオンラインは、いつでも、どこにいても買える利便性といった、“売場”としての機能に偏っています。しかし、本来であれば、ITを活用した個別のマーケティング、ブランディング、プロモーションなどを展開する余地も大きいはずなんですね。そこで、今後12年をかけて情報システムを改修し、お客さまとのコミュニケーション機能を高める方針です。

また、「新ブランドのインキュベート機能」も付加したいと考えています。当社も、今や他社に追い上げられる立場になりましたが、例えば、当社のプティマインは、インスタグラムだけでも約40万人のフォロワーがいます。子供服のジャンルでの、そうした圧倒的な集客力を、新ブランドの育成に生かさない手はありません。社内プロジェクトで企画したオリジナル商品や、海外から導入を検討しているブランドをナルミヤオンラインでテスト販売してみて、好評であれば、ECで本格販売するといった流れですね。ブランドが成長して売上げも増えたら、リアル店舗の展開も視野に入れます。リアル店舗と違って、ECは新ブランド立ち上げのイニシャルコストが抑えられ、トライしやすいのがメリットです。

――インキュベート機能はいつ付加する見込みですか。

國京 すでに一部のブランドで、試験的にスタートしています。例えば、2022年に立ち上げた「リセマイン」は、ECでデビューしました。現在もECのみでの展開ですが、販売実績も、現在の約2億円から2023年度には倍増する見込みで、リアル店舗の展開も検討しています。ECで売上規模23億円の新ブランドを年に23ブランド立ち上げ、リアルとオンラインの両面で販路を拡大できるようにしたいですね。そうなれば、事業の新しい成長モデルができると期待しています。