渋谷の本店閉店で東急百貨店が向かう “百貨店”にこだわらない「新しいリテール」の姿とは
「旗艦店に頼らない」という覚悟が生まれた
2021年からの中期経営計画において東急百貨店が掲げるビジョンは「いつでも、どこでも。ひとりひとりの上質な暮らしのパートナー」。従来の百貨店事業は吉祥寺店、たまプラーザ店で継続しつつ、専門店、EC、外商なども含めたマルチな業態を結びつけ、リアル店舗を核としながら、客との接点を拡大させていくものだ。
そのカギとなるのがデジタルだ。2023年2月1日から「OMO推進事業部」を発足。EC通販のプラットフォームを基盤としながら全社横断でオフライン・オンラインの融合を進めていく。
すでにオンラインにおける取引先との在庫連携や、フードとビューティー・コスメにおけるBOPIS(Buy Online Pick-up In Store:オンラインで購入した商品を店舗で受け取るサービス)の導入、渋谷に点在する店舗をつなぎ、渋谷ならではのギフト情報を発信するポータルサイト「しぶぎふ」の始動など、着々と打ち手を講じているところだ。
「当社にとって渋谷の本店は『旗艦店』ともいえる存在だった。ただ、その本店がなくなったことでかえって社内の変革への覚悟が定まった。将来の成長に向けてさらに挑戦を続けていきたい」
伊藤氏の言葉には力がこもる。東急百貨店本店というシンボリックな店舗の閉店は、同時に東急百貨店が、次のステージに向かう号砲でもあったのだ。