これからもエービーシー・マートの1人勝ち? 靴専門チェーンの動向を分析!
ABCマートの背中を追う2番手、3番手
そんなエービーシー・マートの背中を負うのは2番手のチヨダだ。「東京靴流通センター」を中心に、「靴チヨダ」「シュープラザ」などの屋号で全国に店舗を展開する同社。エービーシー・マートが駅前の一等地や大型ショッピングセンターのテナントとして展開するのとは対照的に、「東京靴流通センター」は6~7割がロードサイドの大型店となっている。集客力で劣る一方で、家賃などの運営コストを抑えることができるため、低価格帯中心のラインナップでも採算がとれるというモデルだ。
かつては靴の激戦地で知られる上野でエービーシー・マートと激しいつばぜり合いを演じたチヨダだが、直近の業績を見るとその面影は感じられない。2009年2月期に1700億円あった売上高は、直近期(2022年2月期)で886億円にまで落ち込み、営業利益は3期連続で赤字に沈んでいる。なお、まもなく発表される23年2月期決算が発表されるが、事前の通期業績予想でも営業利益は赤字の見通しとなっている。
靴専門店チェーン3番手の位置につけるのが、イオン(千葉県)グループの靴販売チェーンのジーフット(東京都)だ。「ASBee」「NUSTEP」などの屋号で展開する同社。筆頭株主であるイオンの持ち株比率は6割を超えており、店舗も大半がイオングループの商業施設内にある。
売上高は2016年2月期をピークに低下を続けており、営業利益は3期連続で赤字と業績は低調だ。一時は債務超過に陥り、イオンからの第3者割当増資で延命されている。現在も再生途上で、23年2月には、イオンから50億円の資金借り入れも発表している。早急に大きな改革が必要であることは間違いない。
2番手以下が不振にあえぎ、“向かうところ敵なし”のエービーシー・マートだが、気になるのは「NIKE」「adidas」をはじめとした人気ブランドの「直販シフト」の動きだ。ECの普及により、ブランドは顧客と直接つながれるようになっており、自社EC・アプリや直営店での販売が急伸している。量販店で販売されることによるブランド毀損の問題も直販シフトに拍車をかけている。
「NIKE」の直販比率は4割に達しており、靴専門店チェーンにとっては明らかな脅威となっている。こうした状況に対し、靴専門店チェーンはどのような戦略を打ち出していくのか。1強とはいえ、エービーシー・マートも安穏としていられないはずだ。