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3~5月の既存店の伸びはライバル2社に後塵、セブンーイレブン再成長への道!

コンビニエンスストア業界のトップをひた走るセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:セブン-イレブン)に異変が起きている。最新期の決算こそ増収増益を達成したものの、販管費上昇や客数減、低採算店の増加に加え、今年に入ってからは“24時間営業問題”が噴出するなど、多くの課題に直面しており、これまでのような成長スピードを維持するのが難しい状況にある。しかも今年3~5月の既存店売上高伸び率は、ライバルであるファミリーマート、ローソンの伸びを下回る状況が続く。再成長に向け、業界最大手はどう動くか――。

数字上は“盤石”も、環境変化が不安要素に

 セブンイレブンの20192月期の業績は、チェーン全店売上高が対前期比4.7%増の4兆8988億円、直営店売上高と加盟店からの収入などを合計した営業総収入は同2.8%増の8735億円だった。

 増収要因は、店舗数の増加と既存店の好調だ。期末時点の国内総店舗数は、2876店舗と前期から616店舗の増加となった。既存店売上高伸び率は同1.3%増。客数が同0.6%減だったものの、客単価が同1.9%増となったことにより、前期実績を上回った。 「コンビニエンスストアの稼ぐ力」の指標と言われる平均日販(全店ベース)は、同3000円増の65万3000円と、同業他社に10万円以上の差をつけている。

 「さすがコンビニの王者」といった風格で盤石の強さのようにも見えるが、不安要素はある。店舗数増加によって営業利益自体は増益を続けてきたものの、販管費比率が上昇し、営業利益率は下降傾向にある。また、この10年間で見ると、既存店売上高と粗利益率の伸び率も鈍化しており、収益性改善が急務となっている。

 さらに2019年に入ってからは、あるフランチャイズ加盟店オーナーが本部に対して24時間営業の見直しを訴えたことに端を発する“24時間営業問題”への対応を迫られるなど、国内コンビニエンスストア事業には強い逆風が吹いている。

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投資額1450億円の6割を既存店に振り向ける、既存店を大きく成長させたいが・・・

投資額1450億円 6割強を既存店に

既存店投資では、かねてより進めている新レイアウト導入のほか、テスト中の省力什器・設備の採用も推し進めていく

 店舗政策では、低採算店が増加していることを受け、出店・閉店基準を厳格化する。このことは必然的に新規出店数が減ることを意味する。従来は「新店6:既存店4」の割合だった投資配分を見直し、6割強を既存店強化に投じる方針に転換した。

 それに伴い、営業政策では深刻化する客数減と既存店売上高伸び率の鈍化への対策として、16年末から進めている新レイアウト導入に注力。新レイアウトの導入店舗数は現在3400店舗(19年2月期末時点)。20年2月期は、一気に9400店舗まで増やす。新レイアウトに改装した店舗では、平均日販が1万4200円アップする効果が見られており、粗利益率の改善も見込んでいる。

 批判の矛先が向けられている、24時間営業問題への対応も進める。19年3月から直営店10店舗で短縮営業の実験を進めており、4月から加盟店でも実験を始めた。省人化による生産性向上も推し進める方針で、数店舗で先行テスト中のセミセルフレジを年内に全店導入するほか、直営136店舗でAIを活用した発注テストを実施中だ。

 こうした取り組みにより、セブンイレブンでは20年2月期にチェーン全店売上高5兆570億円(同3.2%増)、営業総収入8983億円(同2.8%増)、営業利益2500億円(同2.0%増)、既存店売上高伸び率同1.5増、粗利益率32.1%(同0.2ポイント増)の達成をめざす。

 とは言え、3~5月の既存店売上高をみてみると、3月0.1%増、4月0.2%増、5月0.7%増と、尻上がりにその伸び幅が大きくなっているものの、現時点では既存店売上高1.5%成長は高いハードルに思える。業界2位のファミリーマートは3月0.8%増、4月1.8%増、5月2.4%増で、3位のローソンは3月0.3%減、4月1.7%増、5月2.4%増で推移しており、セブンーイレブンを上回る水準で既存店を成長させている点からも、セブンーイレブンの“堅調”な伸びはある種の物足りなさを感じる。

 改装効果をどこまで最大化させられるかが、再成長をめざすうえでの正念場となりそうだ。