ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)が2019年3月期通期業績を発表した。
営業収益4350億円(対前期比4.8%増)、営業利益179億円(同5.5%増)、経常利益174億円(同5.8%増)、当期純利益117億円(同7.2%増)。営業収益営業利益率は横ばいの4.1%と、前期に続いて収益力の高さを見せつけた。そんな同社にも、流通各社を苦しめる「客数減」の影響が現れ始めている――。
既存店売上高1.3%増!好決算の要因は?
単体の営業収益は、3809億円(同4.7%増)、営業利益率は160億円(同5.5%)、経常利益は159億円(同6.4%増)、当期純利益は111億円(同8.1%増)だった。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の全ベースで30期連続の増収増益を達成している。
ヤオコーはここ数年、成長を見据えた大型投資を実施してきた。16年2月期~17年2月期は「デリカ・生鮮センター」「新物流センター」を開設。18年2月期は新サポートセンター(本社)を建設したほか、新情報システムの稼働も開始した。こうした設備投資に係る減価償却費がかさむこともあり、昨年の決算説明会では「増益達成のハードルは高い」(川野社長)としていたものの、蓋を開けてみれば、難なく増収増益記録を「30」の大台に乗せてみせた。
増収要因は既存店の好調だ。ヤオコー単体の既存店売上高は同1.3%増。ヤオコーがかねてよりKPI(重要業績評価指標)としている「1km圏内の商圏シェア」は18.8%と前期から0.6ポイント(pt)増加した。会員カードの会員数は同9万人増の224万人、会員売上比率は同0.8pt増の80.4%となっている。
この既存店好調による売上総利益の増加が、増益要因(営業利益)となっている。前述の大型投資により、減価償却費が同18.1%増となったほか、人件費や光熱費も高騰しており、販売管理費は同4.6%増となった。これを上回るかたちで、売上総利益が増加(同4.9%増)した(すべて単体ベース)。
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順調に見えるヤオコーの懸念材料
「客数減の一番の要因は、食品スーパー同士の競争」
順調に見えるヤオコーだが、懸念材料もある。それは客数の減少だ。
すでに発表済みの流通各社の最新決算を見ても、客数減に苦戦する企業が目立っている。ヤオコー単体の既存店客数も同0.9%減と前期実績を下回った。直近過去5年間でヤオコーの既存店客数が前期実績を割った例はなく、客数減が深刻であるのが窺える。
客数減の要因について川野社長は「分析しているが、明確な答えはない。ドラッグストアの影響も一部ではあると思われるが一番は食品スーパー同士の競争。競合店を買い回っているお客さまが増えているのではないか」と話す。
「1km圏内のシェアは着実に上がっているので、近くのお客さまについては当社の店に来ていただいているという認識でいる。ただ、来店回数が減っている。それかまとめ買い、買い回りもしている可能性もある。お客さまの買物行動は日々少しずつ変わっているので、絶対的な客数もだが、いわゆる純客数、1km圏内のシェアを高めていくことが今後のポイントになるだろう」(川野社長)。
2020年3月期は消費増税を控え、消費が停滞することが予想される。大型投資の償却負担も続くうえ、人件費・光熱費も引き続き高止まりすると見られ、経営の舵取りはいっそう難しくなる見通しだ。先行きが不透明な中、ヤオコーは増収増益記録を伸ばすことができるか。今期の経営にも注目したい。